最新記事
日韓関係

日韓協力の新局面......通貨スワップ協定で経済を支える

2024年1月12日(金)17時00分
佐々木和義

日韓通貨スワップが終了した13年以降、韓国は各国との通貨スワップに取り組んだ。13年と14年にはUAE (200億ディルハム)、オーストラリア(120億豪ドル)などと通貨スワップ協定を締結、17年と18年にはカナダ(カナダドル・無制限)、スイス(100億スイスフラン)と締結したが、いずれも相手国通貨で、米ドルはチェンマイ・イニシアチブ(CMI・384億米ドル)の多国間通貨スワップと再開した日韓通貨スワップのみである。ユーロ、円、ポンドの通貨スワップはない。


韓国経済の外貨流動性危機と対策

韓国はコロナ禍中、2度にわたって流動性外貨不足に陥った。十分な外貨準備があると豪語するが、外貨準備は国債や社債が9割近くを占めるなど現金化は容易ではない。2020年3月から6月にかけ、国策銀行の韓国輸出入銀行が外貨不足に陥った。輸出入銀行の流動性外貨が不足すると輸入代金の支払いに支障が出る。輸出入銀行はサムスンに泣きついて外貨を調達した。

同年3月、韓国は米国と600億ドルを上限とする時限スワップを締結した。コロナ・パンデミックが米ドルに与える影響を懸念した米連邦準備理事会FRBが、韓国、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、シンガポールなど9か国と総額4500億ドルの時限通過スワップ協定を締結したのだ。米韓スワップは2度の延長を経て、21年12月31日に終了したが、期間中、韓国は198億7200万ドルを引き出している。

韓国の米ドル建て通貨スワップは、CMIの多国間スワップと日韓スワップの2つになったが、CMIにおける韓国の立場は支援国だ。被支援国に先立って引き出すと韓国経済の信用度に関わってくる。

日韓通貨スワップを利用して米ドルを引き出すと韓国経済に対する懸念が高まり、加えて日韓双方で批判が出るなど、期限とともに終了する可能性が否めない。韓国と取引する第三国に対し、米ドルを調達できるという安心感を与えるための一種の保険といえそうだ。

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中