最新記事
日韓関係

日韓協力の新局面......通貨スワップ協定で経済を支える

2024年1月12日(金)17時00分
佐々木和義
ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領 岸田首相

韓国銀行は日本銀行と上限100億ドル、期間3年の米ドル建て通貨スワップ協定を締結した......(写真は2023年3月)Kiyoshi Ota/REUTERS

<韓国の2023年の貿易収支は大幅な赤字。対中国貿易赤字が主因で、外貨準備は減少傾向に。日本との通貨スワップ協定が経済安定化の鍵となる......>

韓国産業通信資源部は24年1月1日、23年度の貿易収支は99億7000万ドルの赤字だったと発表した。対中国貿易が赤字となった影響が大きいという。韓国の対中国貿易は国交を正常化した1992年以降、黒字を計上。03年下期から20年間、最大の貿易黒字国だった。

23年12月末時点の韓国の外貨準備高は前年末と比べて30億1千万ドル少ない4201億5千万ドルだった。国債や社債といった有価証券の米ドル換算額が増えたことによる。流動性外貨である預貯金は前年末比で730億7000万ドル減少した。


韓国の対中貿易赤字と外貨準備の減少

貿易赤字と外貨減少が続く23年12月1日、韓国銀行は日本銀行と上限100億ドル、期間3年の米ドル建て通貨スワップ協定を締結した。

通貨スワップは締結国の一方が通貨危機に陥ったとき、自国通貨を担保に相手国から融通を受けられる制度だが、日韓通貨スワップは事実上、日本が韓国を支援する一方通行の協定だ。日本は世界第2位の外貨準備があるうえ、必要に応じて必要な外貨を調達できる。

世界で最も取引が多い通貨は米ドルで、以下、ユーロ、日本円、英ポンド、中国元と続いている。日本は米ドル、ユーロ、英ポンドと無制限・無期限の通貨スワップを締結しており、中国とも2000億人民元、3.4兆円の通貨スワップを締結している。韓国から融通を受ける必要性は皆無である。

日本と韓国は2001年、チェンマイ・イニシアチブ(CMI)に基づく通貨スワップを締結した。1997年から広がったアジア通貨危機を受け、ASEAN+日中韓3か国が合意した二国間通貨スワップで、韓国が通貨危機に陥った際、日本が20億ドルを上限に支援する一方通行の通貨スワップを締結し、2006年、日本から韓国は100億ドル、韓国から日本は50億ドルを上限とする双方向スワップに切り替えた。2005年にはCMIと別枠で30億ドル相当を上限とする円-ウォン通貨スワップを締結した。

日韓通貨スワップの展開と国際関係の影響

日韓通貨スワップはリーマンショックが広がった2008年以降、最大700億ドルまで増額したが、李明博大統領の竹島上陸を機に日韓関係が悪化を辿り、円-ウォン通貨スワップは2013年7月の期限とともに終了し、CMIスワップも15年2月、延長することなく終了した。延長もやぶさかではないと述べた日本に対して、韓国は中国とのスワップがあるから必要ないと豪語した。

韓国と中国は2008年、4000億元(590億ドル相当)を上限とする元-ウォン通貨スワップを締結した。中韓関係が悪化した2017年以降、韓国は終了を危惧したが、中国は延長に同意した。韓国と中国の通貨スワップは、韓国経済が萎縮したとき韓国が中国元を調達できる協定で、韓国と取引する中国企業の代金受け取りを支援するスワップといって良い。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中