「戦闘に勝って戦争に負ける」民間人の犠牲拡大に米政府が戦争遂行への3つの疑問をイスラエルに提起
HOW MANY IS TOO MANY?
前出の米空軍上級将校は、 「イスラエル軍は民間人や民間施設を標的にしているわけではない」と指摘した。
「イスラエル軍は、米軍なら攻撃をためらうような場所でハマスを攻撃しているか? 答えはイエスだ。
軍事目標達成のためなら批判を浴びてもいいと考えているか? これもイエス。
だが民間人の被害を最小限に抑えるというのは努力目標であり、彼らもその努力はしている」
ハマスへの報復攻撃を開始した初日の夜、イスラエル軍は戦闘機と攻撃ヘリによる空襲と、地上および海上からの砲撃で500以上の標的を攻撃した。
ハマスやパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」の拠点や幹部の住居とされる「複数階の建物」も含まれていた。
当局者によれば、イスラエル軍は既存の有事作戦計画に基づき、大規模攻撃への「最大限」の対応として、軍事基地や地下施設と目される場所やハマス指導部の拠点を集中的に爆撃。
砲撃基地や監視所も含め、約1200カ所が標的となった。
アメリカ側の情報によると、イスラエル空軍は既存の計画どおり最初の72時間で約2000発の爆弾を投下した。
パレスチナ自治政府の保健省によれば、この一連の攻撃で民間人849人が殺害され、4250人が負傷したという。
米・イスラエル両国の軍事筋によると、ハマスに宣戦を布告した後、イスラエル軍はハマスによる奇襲の規模と被害状況に鑑み、標的の選択に変更を加え、既存の交戦規定の一部を緩和した。
軍のダニエル・ハガリ報道官によれば、「正確さより打撃を重視」することにした。
ハマス殲滅作戦にシフト
イスラエル軍の現役幹部はこう説明した。
「真の変化は、限定的に懲罰を与える作戦から、ハマス殲滅作戦にシフトしたことだ。適当な標的を攻撃するのではなく、ハマスの軍事機構そのものを破壊する。これまでの作戦とはそこが違う」
イスラエル軍と米情報機関の推定では、ハマスの軍事部門「イザディン・アルカッサム」の戦闘員数は2万5000人強。
24大隊の下に140の戦闘中隊があり、それぞれが歩兵や工兵、ロケット砲、対戦車、防空担当の部隊を擁している。
またイスラエル軍によれば、イスラム聖戦にも1万7000人の戦闘員がいる。ハマスとの合計で、戦闘員の数は4万2000人になる。
どちらの組織についても、イスラエル軍は司令部や支援施設の場所を特定している。
分散した部隊や戦闘員も標的となる。
イスラエル軍が最初に猛爆を加えたガザ北部には、ハマスの5旅団のうち2つ(最多の戦闘員約9000人を擁するガザ市旅団と、戦闘員数約4800人のガザ北部旅団)の拠点があった。