親中派候補の一本化は土壇場で頓挫...台湾総統選「勝利」に向けた中国の暗躍を振り返る【アニメで解説】
Newsweek Japan-YouTube
<台湾総統選を前に、野党陣営一本化に向けた中国の暗躍を振り返るアニメーション動画の内容を一部紹介>
今月13日に総統選挙と議会(立法院)の総選挙が行われる台湾。近い将来に台湾を併合したい中国の習近平(シー・チンピン)国家主席にとって、親中派の候補を勝たせることは死活的に重要だが──。
本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「台湾総統選で笑うのは誰? 中国が暗躍した「野党陣営の一本化」は不発に【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。
現職総統の蔡英文(ツァイ・インウェン)は、3選禁止規定によって今回の総統選に出馬できない。親中派を結束させ、その勝利を確実にするための中国の統一戦線工作は、功を奏する気配がしていた。
立候補を表明していた4人のうち、現職副総統で与党・民主進歩党(民進党)候補の頼清徳(ライ・チントー)を除けば、国民党が立てた侯友宜(ホウ・ヨウイー)、台湾民衆党(民衆党)の創設者である柯文哲(コー・ウェンチョー)、フォックスコン(鴻海科技集団)の創業者であるテリー・ゴウこと郭台銘(クオ・タイミン)の3人は、程度の差はあれ親中派と言えた。
ところが各種の世論調査では、民進党の頼が一貫して35~40%の支持を得てトップ。侯と柯はそれぞれ15~30%の支持率で2位を争い、郭の支持率は10%に達しなかった。
これを受けて中国は、まず郭に出馬を断念してもらい、一方で侯と柯を正副総統候補のセットにして親中派を一本化しようと考えた。
中国政府は10月23日、フォックスコンの経理に不正の疑いありとして調査に乗り出した。同社の株価はたちまち3%ほど急落し、郭は公の場から姿を消すことになる(1カ月後、フォックスコンの中国子会社に2万元の罰金が科された)。
出馬に必要な100万超の有権者の署名を集め、副総統候補も指名していたにもかかわらず、郭は11月24日の期限までに正式な立候補届を出さなかった。
中国はその後、水面下で国民党と民衆党の候補一本化に向けた努力を続けてきた。票の分散を防ぐことで勝利の確率は高まるため、侯にとっても柯にとっても悪い話ではなかったはずだ。
しかし、どちらが副総統に甘んじ、どちらが総統候補になるかで揉めた。両者とも譲らなかったため、総統経験者で国民党の長老・馬英久(マー・インチウ、習との個人的パイプも太い)が自党の侯を説き伏せ、民衆党・柯の求める条件で一本化する合意を取り付けた。
ただ、この合意もすぐに崩壊。調子に乗った柯が条件を追加し、普段は温厚な侯を怒らせたからだ。
そもそも副総統には何の権限もない。どちらの陣営も自党の候補者が副総統に納まることには抵抗しており、交渉はぎりぎりまで続いたが、ついに折り合いはつかなかった。
さて、この選挙で最後に笑うのは誰なのか。
■選挙の行方は? 現地の政界事情に通じた中央研究院の吳叡人(ウー・ウェイレン)のインタビューはこちら