最新記事
注目ニュースを動画で解説

親中派候補の一本化は土壇場で頓挫...台湾総統選「勝利」に向けた中国の暗躍を振り返る【アニメで解説】

2024年1月2日(火)15時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
台湾総統選

Newsweek Japan-YouTube

<台湾総統選を前に、野党陣営一本化に向けた中国の暗躍を振り返るアニメーション動画の内容を一部紹介>

今月13日に総統選挙と議会(立法院)の総選挙が行われる台湾。近い将来に台湾を併合したい中国の習近平(シー・チンピン)国家主席にとって、親中派の候補を勝たせることは死活的に重要だが──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「台湾総統選で笑うのは誰? 中国が暗躍した「野党陣営の一本化」は不発に【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

現職総統の蔡英文(ツァイ・インウェン)は、3選禁止規定によって今回の総統選に出馬できない。親中派を結束させ、その勝利を確実にするための中国の統一戦線工作は、功を奏する気配がしていた。

蔡英文

立候補を表明していた4人のうち、現職副総統で与党・民主進歩党(民進党)候補の頼清徳(ライ・チントー)を除けば、国民党が立てた侯友宜(ホウ・ヨウイー)、台湾民衆党(民衆党)の創設者である柯文哲(コー・ウェンチョー)、フォックスコン(鴻海科技集団)の創業者であるテリー・ゴウこと郭台銘(クオ・タイミン)の3人は、程度の差はあれ親中派と言えた。

台湾総統選における親中派の候補者

ところが各種の世論調査では、民進党の頼が一貫して35~40%の支持を得てトップ。侯と柯はそれぞれ15~30%の支持率で2位を争い、郭の支持率は10%に達しなかった。

頼清徳

これを受けて中国は、まず郭に出馬を断念してもらい、一方で侯と柯を正副総統候補のセットにして親中派を一本化しようと考えた。

中国政府は10月23日、フォックスコンの経理に不正の疑いありとして調査に乗り出した。同社の株価はたちまち3%ほど急落し、郭は公の場から姿を消すことになる(1カ月後、フォックスコンの中国子会社に2万元の罰金が科された)。

出馬に必要な100万超の有権者の署名を集め、副総統候補も指名していたにもかかわらず、郭は11月24日の期限までに正式な立候補届を出さなかった。

郭台銘

中国はその後、水面下で国民党と民衆党の候補一本化に向けた努力を続けてきた。票の分散を防ぐことで勝利の確率は高まるため、侯にとっても柯にとっても悪い話ではなかったはずだ。

しかし、どちらが副総統に甘んじ、どちらが総統候補になるかで揉めた。両者とも譲らなかったため、総統経験者で国民党の長老・馬英久(マー・インチウ、習との個人的パイプも太い)が自党の侯を説き伏せ、民衆党・柯の求める条件で一本化する合意を取り付けた。

馬英久

ただ、この合意もすぐに崩壊。調子に乗った柯が条件を追加し、普段は温厚な侯を怒らせたからだ。

そもそも副総統には何の権限もない。どちらの陣営も自党の候補者が副総統に納まることには抵抗しており、交渉はぎりぎりまで続いたが、ついに折り合いはつかなかった。

さて、この選挙で最後に笑うのは誰なのか。

侯友宜と柯文哲

■選挙の行方は? 現地の政界事情に通じた中央研究院の吳叡人(ウー・ウェイレン)のインタビューはこちら

カルチャー
手塚治虫「火の鳥」展 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中