<紅海>中国海軍艦艇は救難信号を聞いても「助けてくれない」
China's Navy Propaganda Slapped With X Community Note
オマーン湾でロシア、イランと軍事演習中の中国軍艦(3月17日) Iranian Army/WANA (West Asia News Agency)/REUTERS
<中国国営テレビチャンネルは、海賊から商船を守る中国艦船の活動が15周年を迎え、多くの商船を守った、というプロパンダ映像をネットに投稿したが、実際には「助けてもらえなかった」という声が多い>
アフリカ東端のエチオピアやジブチ、ソマリアなどを含む地域「アフリカの角」。その周辺海域の安全確保に中国海軍が貢献しているという内容の動画を中国政府系のアカウントがソーシャルメディアのX(旧ツイッター)に投稿したところ、異議を唱えるコミュニティノートが付いた。紅海を航行する商船からの救難信号に中国海軍が対応しなかったと見られる事例があったからだ。
国営の中国中央電視台(CCTV)の軍事専門チャンネルのX公式アカウントは25日、2分間のプロパガンダ動画を投稿した。アフリカの角とアラビア半島にはさまれたアデン湾における中国海軍の護衛任務が、開始から15周年を迎えたという内容だった。アデン湾で中国海軍の艦艇は数多くの商船を海賊の攻撃から守ってきたというのが中国の主張だ。
ところが11月後半、この海域で海賊対策任務に就いていた中国海軍の艦艇3隻が、商船からの救難信号を無視したと非難される事態が起きた。米国防総省によれば、この商船はソマリアの海賊の攻撃を受けた上、その後イエメンのフーシ派からのロケット攻撃の標的にもなったという。
中国海軍が活動するバベルマンデブ海峡
「国際的な責務を果たす」はずが
この後も、中国海軍の3隻の艦艇(最新鋭の大型駆逐艦を含む)は、紅海を航行中の複数の商船から救難信号が発せられたにもかかわらずまったく応答しなかったとされる。紅海ではフーシ派によるドローンやミサイルによる攻撃が海上交通を脅かしている。
中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙、環球時報のXの公式アカウントはCCTVの動画をリポスト。またウェブサイトには、この海域の海上交通路は「中国の貿易およびエネルギーの生命線」だとする関連記事を掲載した。
問題の動画は、中国海軍の艦艇がソマリア沖を監視する様子に、海賊を制圧する場面とされるアーカイブ映像を組み合わせたもの。2008年12月26日に海軍の特別部隊が発足して以降、中国海軍の艦艇は1600回の護衛任務に就き、中国とそれ以外の国々の船7200隻を守ったという。
「海賊が多く出没するこの海域に軍艦を派遣し護衛を行うことは、中国の国家戦略的利害を守るだけでなく、国際社会に公共の安全を守るツールを提供することで国際的な責任や義務を果たすことにもなる」という専門家の発言を環球時報は伝えている。