ハマスとイスラエル暴力の悪循環は、米中が協力して中東和平を推進するチャンスも生んでいる
ISSUES 2024: MIDDLE EAST
今回の戦争の結果、ガザと西岸とイスラエルで同時に政治的変化が進めば、新たな考え方につながる可能性がある。ガザでは反ハマスムードの高まりとともに、イスラエルのハマス壊滅作戦が恐らくハマスの支配を終わらせるだろう。西岸ではパレスチナ自治政府が支持率低迷にあえいでいる。
選挙は2006年を最後に以降一度も実施されず、マフムード・アッバス議長は任期4年を過ぎ、87歳の今も権力の座に居座っている。2年前の調査ではパレスチナ人の約80%が議長を退任すべきだと回答した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も同様だ。イスラエル史上最悪の1日は彼の監視下で起きた。国家の安全を保てる唯一の指導者としての足場を固めてきただけに大打撃だ。
確かに、ガザと西岸とイスラエルで同時に政権交代が起きる可能性があると、先が見えない状態が長引き、さらに過激な勢力が台頭しかねない。だが、和平実現に意欲的な指導者が誕生する可能性もある。
米中の協力にも期待がかかる
今回の戦争の波紋は中東以外にも及ぶ。だからこそアメリカと国際社会は外交に力を入れているのだ。国際社会は中東への関与を強め、死に体の和平プロセスを復活させなければならない。
従来、アメリカの外交官は2国家共存の必要性に言及はしても、ほとんど口先だけだった。だが現在はイスラエルとパレスチナの紛争を注視、10月18日にはジョー・バイデン米大統領自らイスラエルのテルアビブを訪問した。今回の戦争が終結したら、中東和平交渉を進めるべきだ。
今回の戦争はアメリカと中国が協力して和平プロセスを推進するチャンスを生んでいる。米中両国は地政学的競争を緩和する方法を模索する手始めとして、協力して和平推進に一役買うといいかもしれない。
中国の外交的関与はイランを抑え込むために特に重要だ。イランはハマスやレバノンのヒズボラといったイスラム過激派組織に資金と武器を提供している。中国はイランの最大の貿易相手国でイランにかなりの影響力を持つ。一方、国際社会で孤立するイランにとって中国は外交上の頼みの綱だ。
サウジアラビアとイスラエルの関係正常化交渉は死んではいない。米中は中東の大国と連携し、宗派間の対立をあおり、反イスラエル勢力をたき付け、中東全域で問題を起こそうというイランの意欲(と能力)をそぐことができるかもしれない。