最新記事
アメリカ

現役兵39%減「新兵不足の危機」アメリカ軍が好景気とZ世代の影響で直面する新たな軍事課題

RECRUITMENT BLUES

2023年12月7日(木)17時29分
アレックス・フィリップス(本誌アメリカ政治担当)

231212P50_BGR_02v2.jpg

サウスカロライナ州パリスアイランドの海兵隊基地で54時間の訓練を終えた式典に参加する新兵たち。これ以降は新兵ではなく一人前の海兵隊員になる(2022年3月) ROBERT NICKELSBERG/GETTY IMAGES

調査機関エシュロン・インサイツが今年10月23~26日に有権者1029人を対象に行った世論調査によれば、アメリカが大規模な紛争に突入した場合、軍に志願して兵役に就くことを希望しない人は72%に上り、希望する人は21%にとどまった。

この世論調査は、イスラム組織ハマスが10月7日にイスラエルを攻撃した後に実施された。

だがシュガートは、この結果を見るときは文脈を考慮すべきだと言う。

「アメリカが戦争に参加する理由が、この答えには大きく関わってくる。私は9.11同時多発テロの前に軍隊にいたが、社会の多くの人々は(同時テロ以前は)軍のことなどあまり考えていなかった」

「わが国の歴史を見れば、戦争に参加するには十分な理由がなければならない」と、ミリタリー・リクルーティング・エキスパーツ社のデービッド・ユースティスCEOも言う。

例えばベトナム戦争を支持する上で、アメリカ人は理由を必要とした。

しかしアフガニスタンでの戦争は「自分たちの国であれだけのこと(9.11同時多発テロ)が起こったからこそ、即座に、広く支持された」と、ユースティスは言う。

「アメリカ人はそれが必要なことだと確信すれば、大抵は行動に移す。軍への入隊者が減っているのは全く別の問題で、非常に複雑な話だ」

調査機関J・L・パートナーズが10月初め、英デイリー・メール紙のためにアメリカの有権者1000人を対象として行った調査によれば、アメリカが侵略されたら「国のために戦って死んでもいい」と答えたアメリカ人が全体では過半数を占めた。

しかし年齢別に見ると、この答えは18~29歳の層で最も低かった。一方、ギャラップ社が6月に行った世論調査によれば、軍に対する信頼度は5年連続で低下し、60%にとどまった。

ミネソタ州兵を26年間務めたユースティスは、若年層は軍の新規採用の主要ターゲットだと語る。

今その対象は、1990年代半ば以降に生まれたZ世代だ。インターネット時代に育った彼らは「手っ取り早い満足」を得ることに慣れ切っていると、ユースティスは言う。

「私たちは、選択肢がとんでもなく多い『アラカルト社会』に生きている」と、彼は語った。「何でも手に入れようと思えば手に入るし、届けてもらうこともできる。スワイプやクリック一つで、大抵のものが手に入る」。

寝室で大学の学位を取得できる世界では、厳しい訓練は魅力的に映らないのではないかと、ユースティスは指摘する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

安定した物価上昇が必要、それを上回る賃金上昇も必要

ワールド

カタール首長がシリア訪問、旧政権崩壊後元首で初 暫

ワールド

ドバイ国際空港、2024年の利用者は過去最多の92

ワールド

民間機近くの軍用ヘリ飛行を疑問視、米上院議員 空中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中