現役兵39%減「新兵不足の危機」アメリカ軍が好景気とZ世代の影響で直面する新たな軍事課題
RECRUITMENT BLUES
今の若い世代は軍人と交流する機会も少ないと、軍の採用担当者らはみている。
ユースティスによれば彼の父は韓国で従軍し、その後10人の子供のうち7人が軍に入るのを見守った。そういう家族は現在では非常に珍しいと、ユースティスは言う。
リクルートミリタリー社の上級副社長も務めるヘンダーソンによれば、軍の採用担当者の標準的な手段だった対面でのやりとりがテクノロジーの発展で減っている。
「じかに話をする機会は以前ほど多くない」
10月のアメリカの失業率は3.9%と落ち着いており、10月だけで約15万人の雇用が増えた。
だが依然としてインフレが多くの消費者の懸念材料となるなか、若者が高収入の仕事を求めるのは当然の流れだ。年俸わずか2万ドル強の新兵は、どうしても魅力が乏しく見える。
「失業率と新兵採用の難しさの間に強い結び付きがあるのは間違いない」と、シュガートは認める。
「一般に、不況で失業率が高いときは、必要な数の新兵を難なく確保できる。だが、景気が絶好調で人手不足のときは、仕事の選択肢がたくさんあるため、新兵の確保は難しくなる」
だが、軍での仕事には給料以外の「特典」がたくさんあることは十分知られていないと、新兵採用担当者らは語る。
そして、若い世代を引き寄せるためには、こうした特典をもっとアピールするべきだという。
「雇用情勢が新兵確保を難しくしているとは必ずしも思わない。確かにZ世代にとって経済的な安定は重大な関心事だが、軍人になれば収入だけでなく知識や医療保障を得られる。一定期間勤め上げれば、退職金や住宅ローンの優遇措置も受けられる。自分の成長や退役後のキャリアにプラスとなる貴重な経験も得られる。そうした情報をきちんと伝えれば、むしろ経済情勢は(新兵確保に)プラスに働くと思う」と、ユースティスは語る。
ヘンダーソンも、10月の全米の失業率は3.9%だったが、退役軍人の場合は2.9%だったと指摘する。
そして軍務を経験すると、「周囲が『あいつには無理だ』と思っていたレベルまで自分を追い込む能力」を得られると語る。
それは退役後の就職活動でもプラスに働くはずだ。
その一方で、軍が確保したい人材は基本的に健康だから、無料で医療が得られることはさほど大きなアピールポイントにならないと、元海軍攻撃型潜水艦司令官のシュガートは指摘する。
大学の学費が免除になるという大きな特典も、ジョー・バイデン大統領が進める学費ローン帳消し政策によって魅力が薄れるかもしれない。