もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない、ネタニヤフとその代償
BIBI’S SURVIVAL PLAN
11月に入り、イスラエルのメディアにネタニヤフの次の発言が流れた。
「今はただ一つのことに対処する時だ。ハマスを排除し、人質を取り戻し、ガザに新政権を樹立する」
同時に、ネタニヤフは権力維持には責任転嫁が重要と考えているようだ。彼は10月28日、諜報と治安のトップを含む安全保障担当高官から「ハマスは抑えられている」と何度も報告されていたとX(旧ツイッター)に投稿し、自らの責任を否定。これには連立政権内からも批判が出て、投稿削除と謝罪に追い込まれた。
極右も取り込む手綱さばき
チャンネル12が11月16日に発表した世論調査には、国民の不満が如実に表れた。
「選挙が今日行われたらどこに投票するか」という問いには、ネタニヤフ率いるリクード党を中心とする連立政権が議席数を現在の64から45に減らす一方で、ガンツが党首を務める国家統一党は議席を12から36へと大幅に伸ばすという結果が出た。「首相にふさわしい人物」には41%がガンツを支持し、ネタニヤフは25%にとどまった。
ビスムートは、世論調査は必ずしも正確ではないと指摘する。「国内を回っていると分かるが、世論調査やメディア報道と現実との間には常にギャップがある」
リクード内でネタニヤフの立場は強固なままだと、ブシンスキーは言う。「リクードで指導者に逆らえば有権者は離れていく。ネタニヤフはいまだ象徴的なリーダーだ」
しかもネタニヤフは依然として巧みな手綱さばきで、ユダヤ教超正統派や超国家主義者を含む連立パートナーを手なずけているようだ。戦闘開始に伴うイスラエル人の避難や危機対応に使うべきだとの批判をよそに、彼は超正統派組織への予算配分の継続を支持している。
「彼は国家の優先事項を認識しつつ、超正統派との関係を継続するコツを心得ている。万一のときは彼らを頼れることも分かっている」と、ブシンスキーは言う。次の総選挙は通常なら3年先だから、今は連立パートナーの反乱がネタニヤフを引きずり降ろす唯一の道かもしれない。
しかもネタニヤフは、「ガザへの核兵器使用は選択肢の1つ」と発言した「ユダヤの力」党の極右閣僚アミハイ・エリヤフを解任せず、職務停止の処分にとどめた。