ゲイ・コミュニティーを描いた舞台『インヘリタンス―継承―』主演・福士誠治が語るエイズの今 3世代40年続くパンデミックとは
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ニューヨークのゲイの人々の愛情とエイズとの闘いを描いた舞台『インヘリタンス―継承―』主演の福士誠治氏
「コロナの収束でパンデミックが終わった」と思われているが、現在まで40年続くパンデミックがある──
2020年に世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症。WHO(世界保健機関)は23年5月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言し、世界は日常を取り戻したように見える。
しかし、現在もパンデミックが続いている感染症がある。エイズ(後天性免疫不全症候群)だ。1983年のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の発見から40年が経ち、治療法の確立や予防の普及によってピーク時に比べ死者数は約70%減少、新規感染者数は半減しているが、今なお世界で3900万人がHIVとともに暮らし、年間63万人が亡くなっている。1分に1人が死亡しているのが現実だ。
こうした中、セミナー「40年のパンデミック:エイズの教訓を受け継ぐ」が、23年11月30日に東京で開催された。折しも来年2月、ゲイの人々の愛情とエイズとの闘いを描いた舞台『インヘリタンス―継承―』が日本初演される。主演俳優の福士誠治氏も登壇し、エイズと向き合う大切さを訴えた。
40年続くエイズの流行と3世代のゲイ男性の物語
『インヘリタンス―継承―』は、2018年にロンドンで初演され、演劇界のアカデミー賞といわれるトニー賞で4部門を受賞した話題作だ。ニューヨークのゲイ・コミュニティーの3世代を描き、前後編で上演時間6時間半の大作。福士氏はこの舞台で主役のエリックを演じる。
「ニューヨークに住む30代のゲイの役です。祖父の代から続く大きな家がありそこにゲイの友人や恋人が集まってくる。"愛"があふれた作品だ」と紹介する。今年40歳となった福士氏は、エイズの流行と同じ年を重ねてきた。「以前出演したミュージカル『RENT』もエイズを扱っていましたが、1980年代なのでエイズと死が近いところにありました。今回の『インヘリタンス―継承―』は、医療が進んだ現代、時代背景が全く違う。そうした最近のエイズ事情も知ってほしいし、演劇には伝える力があると思います」と語る。
福士氏とともに登壇したNPO「ぷれいす東京」代表の生島嗣氏は、HIV陽性者を支援する立場から現状をこう語る。
「今は治療法が良くなったので、早めに発見できればちゃんとケアして生きられる。ただ、発見が遅れると最新の医療が受けられず亡くなる人がいる。また感染者の高齢化が進むにつれ、介護や福祉の人、HIV診療以外の医療者にもお世話になることがあり、そうした人がもしHIVについての正しい知識を得るきっかけがないままだった場合、日本では利用者が差別や偏見にさらされることもある」
福士氏は差別偏見について「日本でも多くの人が知識を得て、差別するのはダサいよ、と自然に思える環境にしていかないといけない」と語った。
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