「開き直り」ネタニヤフは、なぜ一時休戦を受け入れたのか?...「犬猿の仲」バイデンと「仲直りハグ」した裏事情
What Happens Now?
エルサレムで人質の解放を求めてデモを行う家族ら(11月18日) SAEED QAQーANADOLU/GETTY IMAGES
<バイデン政権によるイスラエルへの圧力の「中身」と背景。そして、休戦は「2国家共存」につながるのか>
人質の一部解放と引き換えに戦闘を一時休止し、その3倍もの数のパレスチナ人拘束者を釈放する。
1週間前なら、そんな話にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が乗るはずはなかった。得をするのは、どう見てもイスラム組織ハマスの側だ。
一体何が起きたのか? 今後の戦況に影響はないのか? これで国際世論はイスラエルに有利なほうへ傾くのか?
今回の合意では、ハマスがイスラエルの人質50人を、イスラエルがパレスチナの拘束者150人を解放するという。対象は主に女性と未成年者、戦闘休止の期間は4日間とされる。その間は市街戦も爆撃もなく、部隊の移動も避難民の流れも止まる。
一方で国連などの支援団体は動き出し、戦闘が始まった10月7日以降で初めて、パレスチナ自治区ガザ地区に大量の人道支援物資を運び込む。
その後も戦闘休止の延長と解放者の増加を目指し、人質10人が解放されるごとに24時間の戦闘休止を続ける。人質の総数は約230人だから、単純計算では12月の半ばまで休戦が続く可能性がある。
人質解放は現地時間で11月24日の夕刻に始まった。だがネタニヤフはほんの数日前まで、先にハマスが人質全員を解放しない限り、いかなる休戦にも応じないと断言していた。
連立政権を支える極右の諸政党は、21日の閣議でもその姿勢を崩さなかった。それでもネタニヤフはこの話に乗り、国家安全保障省と情報省も同意。挙国一致の戦時内閣は首相の決断に従った。
イスラエルは昔から、自国民の解放のためなら不利な交渉にも応じてきた。今回の合意は、ハマスとの間でたびたび仲介の労を取ってきたカタールが主導し、7週間かけてまとめたものだ。1対3という比率も、過去の例に比べるとさほど悪くはない。
イスラエルは2011年、たった1人の兵士(その5年前にガザとの境界付近でパレスチナ武装勢力に捕まった兵士ギルアド・シャリット)の解放と引き換えにパレスチナの拘束者1000人以上を解放したことがある。
そのとき国会で反対意見を述べた一部の議員は、今回の合意にも反対した。11年の取引で解放されたヤヒヤ・シンワールが今やハマスの政治指導者となり、イスラエル国防軍の暗殺リストに載っているからだ。