最新記事
アルカイダ

アルカイダの手紙、9.11を知らないZ世代の共感を得る...SNSで拡散中の理由とは?

TikTok and Al Qaeda

2023年11月27日(月)18時10分
サジャン・ゴヘル(アジア太平洋財団ディレクター)

アルカイダのような組織の大義に共感する若者の一部は、国際政治と世界史に対する理解が危険なほど狭い。その根底にあるのは、抑圧や問題行動を欧米の専売特許と見なす発想であり、それによって欧米以外の勢力の役割と責任を無視している。そのため、いかなる組織や人物も非欧米というだけで正義のために戦う善良な存在と見なされる。

皮肉なことに、アルカイダのような組織は現地では本質的に極右に位置付けられる。宗教や民族のアイデンティティーを利用して女性や他宗派、LGBTQ(性的少数者)の権利を抑圧するファシストだ。

実は「アメリカへの手紙」はビンラディンではなく、ザワヒリによって書かれた可能性がある。07年にザワヒリが書いた「欧米へのメッセージ」と題された一連の文章の中で、この書簡が取り上げられているからだ。

こうした重要な細部は、ソーシャルメディアを使って情報の断片を拡散させる人々の目に留まらない可能性が高い。

もう1つ、この書簡の一部を広めた人々が見落としているのは、ビンラディンとザワヒリが80年代、パレスチナ人イスラム法学者のアブドゥラ・アッザムと決別したという事実だ。アッザムは旧ソ連のアフガニスタン撤退後、次の世界的聖戦の目標はパレスチナだと主張していた。

実際、パレスチナがアルカイダの最優先目標の1つだったことはない。パレスチナの大義を意図的に強調することで、アラブ世界の大衆の同情を集め、アルカイダへの支持を広げようとはしたが。

若い世代のアルカイダへの関心の高まりは、この組織の問題点も含めた歴史の全体像を出発点にしなければならない。動画の切り取りやミーム、アルゴリズムではなく。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2023年12月5日号掲載>

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏暗殺未遂の容疑者を訴追、銃不法所持で 現

ビジネス

米国の物価情勢「重要な転換点」、雇用に重点を=NE

ワールド

ドイツ、不法移民抑制へ国境管理強化 専門家は効果疑

ビジネス

ボーイング、雇用凍結・一時解雇を検討 スト4日目に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 2
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 3
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将来の「和解は考えられない」と伝記作家が断言
  • 4
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 5
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…
  • 10
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 9
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 10
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 5
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 6
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 9
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 10
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中