アルカイダの手紙、9.11を知らないZ世代の共感を得る...SNSで拡散中の理由とは?
TikTok and Al Qaeda
アルカイダのような組織の大義に共感する若者の一部は、国際政治と世界史に対する理解が危険なほど狭い。その根底にあるのは、抑圧や問題行動を欧米の専売特許と見なす発想であり、それによって欧米以外の勢力の役割と責任を無視している。そのため、いかなる組織や人物も非欧米というだけで正義のために戦う善良な存在と見なされる。
皮肉なことに、アルカイダのような組織は現地では本質的に極右に位置付けられる。宗教や民族のアイデンティティーを利用して女性や他宗派、LGBTQ(性的少数者)の権利を抑圧するファシストだ。
実は「アメリカへの手紙」はビンラディンではなく、ザワヒリによって書かれた可能性がある。07年にザワヒリが書いた「欧米へのメッセージ」と題された一連の文章の中で、この書簡が取り上げられているからだ。
こうした重要な細部は、ソーシャルメディアを使って情報の断片を拡散させる人々の目に留まらない可能性が高い。
もう1つ、この書簡の一部を広めた人々が見落としているのは、ビンラディンとザワヒリが80年代、パレスチナ人イスラム法学者のアブドゥラ・アッザムと決別したという事実だ。アッザムは旧ソ連のアフガニスタン撤退後、次の世界的聖戦の目標はパレスチナだと主張していた。
実際、パレスチナがアルカイダの最優先目標の1つだったことはない。パレスチナの大義を意図的に強調することで、アラブ世界の大衆の同情を集め、アルカイダへの支持を広げようとはしたが。
若い世代のアルカイダへの関心の高まりは、この組織の問題点も含めた歴史の全体像を出発点にしなければならない。動画の切り取りやミーム、アルゴリズムではなく。
<本誌2023年12月5日号掲載>