最新記事
中東

【地図で読み解く】中東9カ国&米中露3カ国...それぞれの「中東問題」への思惑とは?

Puzzling Out the Middle East

2023年11月22日(水)15時45分
ニューズウィーク日本版編集部
中東地図

Save nature and wildlife/Shutterstock

<ハマスによるイスラエルへの攻撃に始まった戦闘。中東諸国と3つの大国は、今回の「中東問題」にどのように関与しているのか?>

10月のイスラム組織ハマスの奇襲に端を発したハマスとイスラエルの戦闘がパレスチナ自治区ガザで続いている。

今回の戦争をより深く理解し、将来のさらなる危機に備えるため、日本ではなじみの薄い中東各国の地理関係や基本的な立場、最近の動きをアメリカ・中国・ロシアの思惑と合わせて読み解くと──。

◇ ◇ ◇


トルコ

パレスチナ問題をめぐり、これまでイスラエルとたびたび対立してきたが、近年は経済協力が進み、今年9月には首脳会談が実現するなど関係正常化が進んでいた。だが今回の戦争を受け、エルドアン大統領は和平仲介に意欲を示しつつも、空爆を繰り返すイスラエルを「戦争犯罪国家」と非難。両国の融和ムードは後退してしまった。

イラン

1979年の革命でイスラム教シーア派を中心とする強硬派が権力を掌握し、イスラム革命の「輸出」を掲げる。ヒズボラやフーシ派、ハマスなどを自国の精鋭部隊・イスラム革命防衛隊が支援することで反米・反イスラエルで結束する「抵抗の枢軸」を形成。今回のハマスの奇襲に直接関与した証拠はないが、その核開発も相まって緊張を高めている。

サウジアラビア

イスラム教多数派であるスンニ派の盟主を自任する。一貫して距離を取ってきたイスラエルとの国交正常化が間近だったが、今回の戦争で実現は困難に。サウジとイスラエルの接近でパレスチナが孤立する焦りが今回のハマスの奇襲の背景にあるという見方もある。敵対するシーア派国家イランと国交を結ぶなど、サウジの強権的リーダー、ムハンマド皇太子の動きは中東と世界をかき回し続ける。

カタール

小国ながら仲介役の「名手」として米中ロ、イランなどの各国や、ヒズボラなど各組織とパイプを持つ。国内に米軍基地を抱える一方、ハマスの事務所も受け入れる振れ幅の広さで、ハマスに捕らわれたイスラエルの人質の一部解放も実現させた。今後の解放や停戦交渉でもカギを握る一方、八方美人ぶりがアラブ諸国の不興を買うことも。

イエメン

サウジが支援する政府と親イランの武装組織フーシ派の間で内戦が10年近く続く。フーシ派はハマスと連帯しイスラエルへミサイルやドローン攻撃を重ねており、米軍とも10月以降交戦している。偶発的な戦闘の拡大がイランなど周辺国を巻き込む全面戦争を引き起こすリスクをはらみ、和平の兆しが見えていた内戦への悪影響も懸念される。


社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 買春疑惑で

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中