学校の宿題が多い日本と少ないフランス......教育にはどちらがいいのか?
なお宿題といっても数分で終わる簡単なものがあれば、手間がかかるものもある。上記の調査では、「どれくらいの時間がかかる宿題を出すか」もたずねている。回答分布から平均値を出すと、日本は22分であるのに対しフランスは10分だ。横軸に宿題を出す回数、縦軸に宿題に要する時間の平均値をとった座標上に、調査対象の57カ国のドットを配置すると<図2>のようになる。
右上は、比較的ヘビーな宿題が多く出る国で、旧共産圏やアジア諸国が多い。日本もこのゾーンで、勤勉な国民性と関連があるのかもしれない。
対局の左下にあるのは、宿題に重きが置かれない国だ。フランスはこの典型で、自由の国・オランダも近辺にある。韓国もこのタイプで、他のアジア諸国と隔たっているのは意外だ。超受験社会で、早いうちから塾通いなどをする子が多いためか。右上は大きな課題を少数出す国で、イタリアが該当する。
宿題が多い国があれば、そうでない国もある。それぞれのお国柄の所産で、どちらがいい・悪いという話ではない。
長期休暇中の宿題など子どもの才能の芽を摘む足かせで、夏休みくらいやりたいことをうんとやらせればいいのではないか。ユーチューバーを志す子がいるなら、思う存分動画を作らせればいい。理想と現実のギャップを知る機会にもなる。こういう考えもあるだろう。
一方で、夏休みの宿題は大きな仕事をコツコツ計画的に成し遂げることを体験させる「隠れたカリキュラム」でもあり、それを取り上げるのは、子どもの成長を阻むことにもなる、という捉え方もあるだろう。
極端な結論は出さず、地域や学校の実情に応じてグラデーションをつければいい。だが最近流行っている宿題代行業は感心できない。子どもを受験に集中させたい親から依頼を受けてやっていることだが、ズルをしてもいいのだと子どもに教え込むことになってしまう。宿題は学習指導要領で定められたことではないので、取り締まりのしようがないのだが、文科省もよくは思っていない。
現在は「代行」の時代だが、許される代行もあればそうでない代行もある。この区別はつけておきたいものだ。
<資料:IEA「TIMSS 2019」>