謎だらけミャンマー内戦を解説。少数民族vs軍事政権vs民主派、中国の思惑...国軍は劣勢に追い込まれた
OMEN IN SHAN STATE
ミャンマー少数民族武装勢力の1つ、カレンニー国民防衛隊(KNDF)に投降した国軍兵士(2023年11月15日) KARENNI NATIONALITIES DEFENSE FORCEーREUTERS
<【勢力マップ付】群雄割拠で専門家も戦況把握が困難だったが、10月末から11月の戦闘で状況が見えてきた。軍事政権は連戦連敗。今後の展開は予断を許さない>
内戦状態に陥ったミャンマー(ビルマ)では各地で戦闘が繰り広げられているが、戦況の把握は専門家でもお手上げだ。何しろ雑多な勢力が入り乱れて戦っている。
おおまかに分類すれば、「少数民族武装勢力」と総称される各地の民族グループ、そして軍政に抵抗する民主派が設置した「統一政府」の軍事組織「国民防衛隊(PDF)」。対するは国軍と軍政寄りの多数の民兵組織、それに国境警備隊だ。
これらの武装集団の全てが四六時中、どこかで起きた戦闘について勝利宣言をする。外部の人間には何がどうなっているのか見当もつかない。
だが北東部のシャン州北部で11月初旬に起きた戦闘で全体的な状況がおぼろげながら見えてきた。戦術レベルで国軍は目下、守勢に立たされているとみていい。
少数民族の3つの武装勢力が「3兄弟同盟」を結成し、10月27日に国軍の拠点に大規模な攻撃を仕掛けた。報道によれば、その後の戦闘で国軍は最大60カ所の前哨基地を失い、拠点にしていた7つの町から撤退した。
今は3兄弟同盟が中国との国境地帯を広範囲にわたって掌握しているが、国軍はこれから本格的な反撃を開始するとみられ、今後の展開は予断を許さない。
国軍は2年前、2021年10月に北西部のチン州の有力な少数民族武装勢力に対する懲罰的な攻撃に踏み切った。同年2月のクーデターで政権を握って以来、国軍が反軍政派に大規模な攻撃を仕掛けたのはこれが初めてだった。
この攻撃には主に2つの目的があった。1つは軍事政権との交渉に応じない少数民族武装勢力に国軍の武力を見せつけること。2つ目はこれらの勢力が民主派の武装組織であるPDFと結託するのを阻止すること。
しかし、この攻撃はあえなく失敗した。国軍が標的に据えたのは少数民族武装勢力の中でもとりわけ弱小な勢力だったにもかかわらず、だ。この不名誉な敗北に続き、国軍はその後の2年間、反軍政派つぶしでさしたる成果を上げられなかった。
それだけでも国軍が誇る「強大な軍事力」が張り子の虎にすぎないことは分かりそうなものだ。さらに北東部、特にシャン州北部とその北隣のカチン州南部で最近起きた戦闘はその事実を嫌というほど見せつけた。
今年7月以降、国軍は北東部で比較的小規模な少数民族武装勢力であるシャン州進歩党(SSPP)とタアン民族解放軍(TNLA)に攻撃を加えてきた。その目的は、これらの勢力を交渉のテーブルに着かせ、全土停戦協定(NCA)に署名させることだったようだ。
NCAはミャンマー政府と少数民族武装勢力が取り交わす合意書で、2015年に複数の有力な勢力が署名したが、2021年の軍事クーデターで事実上無効となった。
しかし今回もまた、国軍は目的を果たせなかった。