ガザ戦争でアメリカは信用を失い、EUは弱体化、漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」
The World Won’t Be the Same
1993年のオスロ合意以来、アメリカは一貫して中東情勢に大きな発言力を持ってきた。
だが、結果はどうだ。
イラクでは悲惨な戦争を招き、イランの核開発は止められず、イスラム過激派の台頭も許した。
イエメンでは内戦が激化し、リビアは無政府状態に陥った。そしてもちろん、オスロ合意は反故(ほご)になった──彼らはそう主張できる。
10月7日のハマスの奇襲を見ろ、アメリカは最も親密な同盟国すら守れないではないか、という主張もできる。
そういう主張に反論することは容易だが、くみする国も多いだろう。実際、中ロのメディアは今回のガザ紛争を機にアメリカ批判を強め、国際社会での支持を広げている。
今回の戦争とアメリカの対応がこの先も、アメリカ外交にとっては重い足かせとなるだろう。
既にウクライナ危機をめぐる欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。
この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復だ。もともとパレスチナの人々への共感は、欧米以外の国々のほうがはるかに強い。
その共感は紛争が長引けば長引くほど、またイスラエル軍に殺されるパレスチナの民間人が増えれば増えるほど強まるだろう。一方で欧米諸国は、歴史的な経緯もあってイスラエル側の肩を持たざるを得ない。
G7に属する某国の外交官が先頃、英紙フィナンシャル・タイムズで嘆いていた。
「これで私たちはグローバルサウスの獲得競争に敗れた。(ウクライナ支援で協力を取り付けようとした)今までの努力は水泡に帰した。......彼らは二度と、私たちの話に耳を傾けないだろう」
漁夫の利を得る中国
それだけではない。
北大西洋両岸の快適な地域に属さない国々から見れば、欧米の関心はあまりに身勝手で恣意的だ。
中東で新たな戦争が起きた途端に、欧米のメディアはその話で埋め尽くされた。新聞もそうだし、ニュース専門のテレビ局もそうだ。政治家はせっせと自らの見解を述べ、どうすべきかを説く。
だが今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。
その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。