最新記事
インドネシア

インドネシア大統領選「ジョコの息子」めぐり「ジョコの義弟」が憲法裁長官を解任された深い理由

A Serious Ethics Violation

2023年11月15日(水)11時30分
セバスチャン・ストランジオ(ディプロマット誌東南アジア担当エディター)
プラボウォ国防相、ジョコ大統領の長男ギブラン

プラボウォ国防相(左)はジョコの長男ギブランを副大統領候補に起用 GALIH PRADIPTAーANTARA FOTOーREUTERS

<年齢要件が緩和され、ジョコ現大統領のかつての対抗馬プラボウォ国防相が、ジョコの長男を副大統領候補に選んだ。そして、国内で非難が巻き起こった>

インドネシア憲法裁判所のアンワル・ウスマン長官は11月7日、正副大統領選候補者の年齢要件を緩和した決定をめぐり「重大な違反」があったとして、同裁判所の倫理評議会から辞職を命じられた。

問題とされたのは、アンワルがジョコ現大統領の義弟という立場にありながら、来年2月14日に予定されている正副大統領選へのジョコの長男出馬に道を開いた10月16日の審理を辞退しなかったことだ。

ロイター通信によれば、評議会は「(アンワルが)辞退しなかったことは裁判官の倫理規定に抵触する」と認定。「外部からの介入の余地を作り」、「(司法の)独立の原則に違反した」と判断した。

10月に憲法裁が下した法的判断は、40歳以上という正副大統領候補の年齢制限に例外を設け、選挙で地方自治体のトップに選ばれた経験があれば出馬が認められるとした。この決定はジョコの長男ギブラン・ラカブミン・ラカ(36)のための救済措置との見方が大勢を占めている。

ギブランは2020年、かつて父親も務めたソロ(スラカルタ)市長に当選しており、この決定後に大統領選出馬を表明しているプラボウォ国防相の副大統領候補となることが発表された。

大統領選への影響は?

この判断は国内で大きな波紋を呼び、ジョコは息子のために影響力を行使し、来年の退任後も権力を維持する気だという非難が巻き起こった。

政治活動家や法律の専門家は、政治的動機に基づく判断だとして訴えを起こした。特にアンワルについては、利益相反が疑われる過去の裁判では審理を辞退したのに、今回はそれをしなかったことが問題視された。

3人のメンバーからなる倫理評議会は、アンワルを長官職から解任したものの、一定の条件下で憲法裁にとどまることは認めた(利益相反を考慮して選挙絡みの判決に参加することは禁止)。多くの訴状が求めた10月16日の法的判断の破棄に対しては、評議会には裁判所の決定を覆す権限はないと、ジムリー・アシディキ議長は主張した。

大統領選へのギブラン参入が選挙戦にどのような影響を与えるかはまだ分からない。2014年と2019年の大統領選でジョコに敗れたプラボウォは、ギブランをパートナーに選んだことで、今も根強いジョコ人気にあやかれる可能性がある。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中