窮地の与党が頼るのは、全羅道育ちの「青い目の韓国人」医師...若手造反を食い止める「特効薬」になるのか?
To Heal Ruling Party Rifts
与党「国民の力」の革新委員会委員長に就任した印は、アメリカ人家庭出身で、韓国で生まれ育ち、韓国に帰化した。医学教授でもある YONHAP NEWS/AFLO
<来春の総選挙を前に危機感が高まり、韓国でよく知られたアメリカ系韓国人・印曜翰に党改革を託した与党「国民の力」...その「異色の助っ人」効果は?>
韓国の政権与党「国民の力」が党勢挽回の望みを託したのは、政界とは無縁な「改革の顔」だった。
10月11日に行われた首都ソウルの西端に位置する江西区の区長補欠選挙で、与党候補は最大野党「共に民主党」の候補に得票率17ポイント超の大差をつけられて敗退。この選挙は来年4月の総選挙に向けた試金石とみられていただけに、与党にとっては痛恨の敗北となった。
韓国では地方の有権者は支持政党に忠実で、南西部は共に民主党、南東部は国民の力という勢力図は不動だ。だがソウルの有権者は時の政権の実績を見て選挙のたびに支持政党を替える。今回は与党に厳しくも明確な審判を下した。
党内の大改革の一歩として、与党指導部は10月23日、党革新委員会のトップに異色の人物を据えた。延世大学セブランス病院の国際診療センター長で家庭医学科の教授である印曜翰(イン・ヨハン、ジョン・リントン)。思い切った人選だが、賢明な動きと言える。
印は共に民主党の強固な地盤・全羅道でアメリカ人家庭に生まれた。祖父母は日本の植民統治下で貧しい人々に医療を提供。父親は朝鮮戦争で戦い、印自身は民主化運動に参加し、北朝鮮の結核対策を支援した経歴を持つ。
■【動画】「青い目の韓国人」印曜翰(イン・ヨハン、ジョン・リントン) とは?
印とその家族の物語は韓国ではよく知られていて、一家はリベラル派にも好感を持たれている。その印に党改革を託したのは、党指導部の抜け目ない計算にほかならない。
裏を返せば、国民の力は今、切実にフレッシュな人材を必要としているということだ。委員長就任が決まると、印は記者団にこう語った。
「愚かなことを聞かれた。国民の力か共に民主党か、どちらを支持しているか、と。私は帰化した韓国人で、全羅道で育ち、全羅道を心から愛している。ただそれだけだ」
印には、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領や党の大物が言いたがらないことを言い、やりたがらないことをやってもらう。それが有権者の「政権与党離れ」を止めるために党指導部が編み出した戦術なのだろう。
実際、多くの韓国人は変化を実感している。
「青い目の韓国人」が記者会見に臨み、流暢な韓国語で党の大物に忖度せずに言うべきことを言えばそれも当然だ。印は党人事で大ナタを振るうだろう。何しろ「妻と子供たち以外は全ての人を替える必要がある」と記者団に語ったのだから。