最新記事
黒海艦隊

また撃破!ウクライナにとってロシア黒海艦隊が最重要の敵である理由

Russia's Black Sea Fleet Problems Are Getting Worse

2023年11月8日(水)17時54分
デービッド・ブレナン

黒海艦隊の新鋭艦「アスコルド」が爆発したとみられる瞬間 Daily Mail/YouTube

<海軍力で圧倒的に劣るウクライナ軍が、ロシア軍の誇る黒海艦隊にまた大きなダメージを与えることに成功した。だが黒海に面した食料積み出し港をロシアに封鎖されているウクライナにとって、黒海艦隊は依然として大きな問題だ>

<動画>黒海艦隊、ゲリラ攻撃に手も足も出ず

 

消耗戦と化したウクライナとの戦争において、ロシアの黒海艦隊は、たいした通常海軍力ももたない敵からの執拗な攻撃にさらされている。

ロシアによる本格的なウクライナ侵攻は、数の上で優位に立つ侵略側が繰り返し挫折を味わう物語となっている。世界最高水準とうたわれる恐るべき国産軍事技術で武装した侵略者が、小柄で機敏な敵を制圧できずにいるからだ。

まさにそれがあてはまるのが、クリミア半島に接する黒海だ。ロシアにとってこの戦争の重要な舞台であり、ウクライナによる手痛い打撃を受け続けている場所でもある。

ロシアが占領したクリミアの都市ケルチにあるザリブ造船所は11月4日、黒海艦隊にとって新たな屈辱の舞台となった。ロシア国防省によると、ウクライナはこの造船所に15発の巡航ミサイルを撃ち込み、うち13発は迎撃したが、残りの2発は船舶1隻に損傷を与えたという。国防省はどの船舶が、どの程度の被害を受けたかを明らかにしていない。

その点、ウクライナ空軍のミコラ・オレシュチュク司令官は率直だった。ウクライナのミサイルが「ロシア海軍の最も近代的な艦船のひとつ」に命中したとテレグラムに書き込んだ。損傷した艦船は、過去18カ月に渡ってウクライナの都市を恐怖に陥れてきたロシアの長距離巡航ミサイル「カリブル」を搭載可能な軍艦だったという。

最新鋭の軍艦が損傷?

オレシュチュクは、具体的にどの船が攻撃されたのかは明かさなかったが、ウクライナの戦略広報局は6日、標的となったのは、新型のカラクルト級コルベット艦「アスコルド」だったと報告した。同局はソーシャルメディアへの投稿で、この艦は「大きな被害を受け、修理は不可能かもしれない」としている。

アスコルドは、最大8発のカリブル巡航ミサイルを搭載可能な小型ミサイル母艦で、射程は2400キロを越える。黒海で試運転中であり、今年後半に黒海艦隊に加わる予定だったと報じられている。

元ウクライナ海軍大尉で、現在は防衛・ロジスティクス・コンサルタント会社ソナタの戦略コンサルタントを務めるアンドリー・リジェンコは、早々とアスコルドが標的となった船であると指摘した一人だ。

リジェンコは本誌に、アスコルドはロシアの比較的新しいプロジェクトであり、ウクライナの攻撃でひどく損傷したと語った。「おそらく、今年の12月に予定されていた黒海艦隊への就役は見送られ、修理が可能だとしても、数カ月から数年かかるだろう」と言う。

「衛星写真から、上部構造がひどく損傷していることが見て取れるし、おそらく船体にも損傷があるだろう」とリジェンコは付け加えた。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米を不公平に扱った国、関税を予期すべき=ホワイトハ

ワールド

トランプ氏、5月中旬にサウジ訪問を計画 初外遊=関

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中