最新記事
動物

メスと交尾するためならその子供を食べてしまう...... オスのツキノワグマに装着したカメラがとらえた衝撃映像

2023年11月4日(土)19時30分
小池 伸介(ツキノワグマ研究者) *PRESIDENT Onlineからの転載
ツキノワグマのこども

ツキノワグマのこども Anan Kaewkhammul - shutter stock


動物が繁殖にかける執念はすさまじい。ツキノワグマ研究者の小池伸介さんは「オスのクマにカメラ付き首輪をつけて調査したところ、子グマを食べている様子が撮影された。子供を殺して母グマの発情をうながすためで、0歳の子グマの死亡原因は大半がオスによるとされている」という――

※本稿は、小池伸介『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら ツキノワグマ研究者のウンコ採集フン闘記』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。

電波発信機からカメラ付き首輪に進化した調査方法

科学技術の発展とともに、クマの調査方法もどんどん進化している。私が学生のころは誤差が大きい割には追跡に手間暇がかかる電波発信機しか使えなかったが、そのうちGPS首輪が登場して人工衛星が格段に正確で時間のかからない調査を実現してくれた。そして、今ではカメラを搭載した首輪を装着できるようになったのである。

もともと、生き物にカメラを取り付けて、その生物の行動を探る調査は、「バイオロギング」と呼ばれている。カメラには加速度センサーも付けることができるので、映像だけでなく、移動するスピードから深さや高さまで記録できる。

バイオロギングは、最初はウミガメやアザラシなど、海の生き物を対象にすることが多かった。水中であれば、大きくて重いカメラが浮力で軽くなるので動物に負担がかからず、調査しやすいのである。また、ウミガメやアザラシは四肢が短くヒレ状なので、カメラを不快に思っても取ることができず、自力で外される心配がほとんどない。

高価な最新機器がすぐおしゃかに...クマの破壊神ぶり

技術革新によって小型化されると陸の動物にもカメラを付けることができるようになった。

海外ではペットのネコに装着することが多いようだ。完全室内飼育が主流になりつつある日本とは違い、海外では放し飼いが多くてネコが行方不明になることがよくある。そこでカメラを搭載して行動パターンやよく行く場所を把握すれば、いなくなっても格段に見つけやすくなるというわけだ。

野生動物では、前脚でカメラを外せないのでシカによく使われている。では、クマはどうだろう。そう思い、バイオロギング用のカメラのメーカーに問い合わせてみた。

「シカ用のカメラってクマにも使えませんか?」
「いや〜、クマはシカと違って凶暴ですからね。しかも、前脚で外そうとするんじゃないですか? もちろん装着はできますけど、壊れることが多いんじゃないかな。故障や破損があっても保証はできませんが、それでよければお使いください」

まあそうだろう。トラップ、GPS首輪、ビデオカメラ、心拍数の記録用機械......。クマの破壊神ぶりには今までも散々泣かされてきたし、最新の高価な機械を投入するたびお星様にされてきた。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、日本などをビザ免除対象に追加 11月30日か

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

ゴールドマン、24年の北海ブレント価格は平均80ド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中