共和党メルトダウン──自己顕示欲しかない「トランプ教信者」が地方から全米を乗っ取る
The GOP Schism Is Deeper Than You Think
シャナハンによれば、「過去何十年も、州レベルでの共和党内の争いは、ウォール街や企業の利益団体から選挙資金を得ている金融族と、地元のカントリークラブで党内政治を行うような昔ながらの主流派との対立だった」という。
それが変わったのは2008年だ。「うまく組織化された草の根の過激な保守派・ティーパーティーの台頭をきっかけに共和党の右傾化が進み、州レベルの共和党の伝統的な中道派の威厳を剥ぎ取る保守派の活動が活発化した」と、シャナハンは言う。
共和党内の対立は何十年も前からあったとはいえ、トランプを熱狂的に支持するMAGA(Make America Great Againアメリカを再び偉大な国に)党員の存在が、党の分断を招く決定的な要因になっている。
シャナハンによれば、ここ数年で「MAGA活動家がティーパーティーに完全に取って代わった」。MAGA党員もティーパーティーと同様、保守的でキリスト教福音派の色合いも多少はあるが、むしろ「トランプ教の信者」と呼ぶに相応しい。
「彼らは、かつての党幹部のように地元の支持を固めようともせず、支持母体づくりもしない。その戦術はしばしば対立候補を誹謗中傷するネガティブキャンペーン頼みで、恨みや憎悪をパワーにしているように見える。全米各州には、2020年の選挙結果を否定し、いまだに法廷で争っている共和党員がどんなに多いことか」
どちらの派閥が勝つか
「MAGA党員は権力が欲しいだけで、社会を良くするために権力をどう行使するかにはあまり関心がないようだ」と、シャナハンは言う。「これはトランプ流のやり方だが、彼らは対立を解決するために有権者の意思を問うのではなく、裁判沙汰にしたがる傾向がある。また往々にして論理的な説得力ではなく、声の大きさで目立とうとする」
MAGA党員の自己顕示欲が招く内部分裂のせいで、共和党は選挙で大きな痛手を被ることになりそうだ。
有権者は地元の問題の解決を期待してMAGA派の候補者に投票したのに、彼らはトランプの流儀を真似て、国家レベルの大言壮語を並べたがると、シャナハンは指摘する。
「その結果、今の共和党は醜悪の極みのように見える。深い亀裂が走り、憎悪に満ち、極論が入り乱れる集団と化していて、2024年の選挙に向けて、州・自治体レベルで一貫性があり、有権者の共感を得られるマニフェストを打ち出すことなどとうてい不可能だ」
「党内闘争でどの派閥が勝つかは重要だ」と、ギフトは言う。「とりわけ、共和党はここ数十年、州議会と地方の行政当局で要職を抑え、大きな影響力を持ち」、選挙の区割りなどで民主党より有利な状況をつくれたからだ。
それも終わるかもしれない。醜悪な内紛劇のせいで、有権者に「混乱した政党」と見なされれば、共和党は地方レベルでこれまで握ってきた権力を手放すことになるだろうと、ギフトは予想する。
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