最新記事
アメリカ政治

共和党メルトダウン──自己顕示欲しかない「トランプ教信者」が地方から全米を乗っ取る

The GOP Schism Is Deeper Than You Think

2023年11月3日(金)11時23分
ダラ・ロシュ

シャナハンによれば、「過去何十年も、州レベルでの共和党内の争いは、ウォール街や企業の利益団体から選挙資金を得ている金融族と、地元のカントリークラブで党内政治を行うような昔ながらの主流派との対立だった」という。

それが変わったのは2008年だ。「うまく組織化された草の根の過激な保守派・ティーパーティーの台頭をきっかけに共和党の右傾化が進み、州レベルの共和党の伝統的な中道派の威厳を剥ぎ取る保守派の活動が活発化した」と、シャナハンは言う。

共和党内の対立は何十年も前からあったとはいえ、トランプを熱狂的に支持するMAGA(Make America Great Againアメリカを再び偉大な国に)党員の存在が、党の分断を招く決定的な要因になっている。

シャナハンによれば、ここ数年で「MAGA活動家がティーパーティーに完全に取って代わった」。MAGA党員もティーパーティーと同様、保守的でキリスト教福音派の色合いも多少はあるが、むしろ「トランプ教の信者」と呼ぶに相応しい。

「彼らは、かつての党幹部のように地元の支持を固めようともせず、支持母体づくりもしない。その戦術はしばしば対立候補を誹謗中傷するネガティブキャンペーン頼みで、恨みや憎悪をパワーにしているように見える。全米各州には、2020年の選挙結果を否定し、いまだに法廷で争っている共和党員がどんなに多いことか」

どちらの派閥が勝つか

「MAGA党員は権力が欲しいだけで、社会を良くするために権力をどう行使するかにはあまり関心がないようだ」と、シャナハンは言う。「これはトランプ流のやり方だが、彼らは対立を解決するために有権者の意思を問うのではなく、裁判沙汰にしたがる傾向がある。また往々にして論理的な説得力ではなく、声の大きさで目立とうとする」

MAGA党員の自己顕示欲が招く内部分裂のせいで、共和党は選挙で大きな痛手を被ることになりそうだ。

有権者は地元の問題の解決を期待してMAGA派の候補者に投票したのに、彼らはトランプの流儀を真似て、国家レベルの大言壮語を並べたがると、シャナハンは指摘する。

「その結果、今の共和党は醜悪の極みのように見える。深い亀裂が走り、憎悪に満ち、極論が入り乱れる集団と化していて、2024年の選挙に向けて、州・自治体レベルで一貫性があり、有権者の共感を得られるマニフェストを打ち出すことなどとうてい不可能だ」

「党内闘争でどの派閥が勝つかは重要だ」と、ギフトは言う。「とりわけ、共和党はここ数十年、州議会と地方の行政当局で要職を抑え、大きな影響力を持ち」、選挙の区割りなどで民主党より有利な状況をつくれたからだ。

それも終わるかもしれない。醜悪な内紛劇のせいで、有権者に「混乱した政党」と見なされれば、共和党は地方レベルでこれまで握ってきた権力を手放すことになるだろうと、ギフトは予想する。

 

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅続落で寄り付く、米株急落の流れ引き継

ビジネス

2月実質消費支出、前年比-0.5%=総務省(ロイタ

ワールド

日米韓、エネルギー協力の強化で合意 3カ国外相共同

ワールド

ロシアはエネ施設停戦に違反、米国務長官にウクライナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 3
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中