共和党メルトダウン──自己顕示欲しかない「トランプ教信者」が地方から全米を乗っ取る
The GOP Schism Is Deeper Than You Think
パトリック副知事はイスラエル・ガザ紛争を「自分の政治的な利益のために」利用したと、フェラン下院議長を非難し、辞任を求めている。
ニューハンプシャー州では、2020年の選挙でトランプに後押しされて連邦上院議員になったブライアント・メスナーがトランプに反旗を翻し、暴動や反乱に関与した者は公職に就けないと定めた合衆国憲法修正第14条を根拠に、「トランプは大統領選に出馬する資格なし」と主張。
これに対しクリス・エイガー同州共和党委員長は8月、「共和党は誰であれ候補者の出馬が制限されないよう戦う」と宣言し、メスナーとの対決色を鮮明にした。
バージニア州では、最近設定された第17選挙区における指名候補選びの方式をめぐり、共和党全国委員会のドーン・ジョーンズ立法委員長が州レベルの決定を不服として裁判を起こす騒ぎが起きた。
トランプの熱烈な支持者であるジョーンズは、同州のグレン・ヤンキン知事とジェーソン・ミジャレス司法長官(いずれも共和党。州民に人気があるヤンキンはトランプと距離を置いている)の求めに応じて州当局が第17選挙区では予備選ではなく党員集会で指名候補を選ぶ方式にしたことに待ったをかけたのだ。
党の団結は夢のまた夢
法廷はジョーンズの主張を認め、第17選挙区でも予備選が実施されることになった。ジョーンズはこれとは別に、州知事と州司法長官の圧力に屈したとして、同州の選挙管理委員会に対しても訴訟を起こしている。
本誌が10月31日に取材した2人の政治学者は、こうした地方における対立は全国レベルで共和党をむしばむ分断を反映していると述べた。
共和党の内紛は党の進むべき道をめぐる争いとも解釈できると、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの米政治研究所の創設者で所長のトーマス・ギフトは本誌に語った。
「州レベルでの共和党の数々の内紛劇を見ると、機能不全に陥っているのは連邦議会の共和党だけではないようだ。首都ワシントンで共和党をずたずたに引き裂いている(保守と中道の)対立は国中でこの党を分断していると見ていい」
「地方レベルの内紛の中には他とは無関係な個別の揉め事もあるだろうが」と断りつつ、ギフトはこう付け加えた。「全体として、党の今後の方向性をめぐる、より広範な対立が起きているという印象を否めない」
「下院共和党の状況をおおむね反映するように、全米各地で共和党の魂をかけた熾烈な戦いが繰り広げられている」と言うのは、英サリー大学の政治学の准教授で、『大統領になったトランプ/選挙遊説から世界の舞台へ』The Trump Presidencyの共同編集者であるマーク・シャナハンだ。「連邦レベルの対立が急速に地方に波及し、あちらこちらで派閥争いが起きている。2024年の選挙まで残り1年足らずというのに、現状では党の団結などとても望めない」