NZ右派政権の誕生へ:対中外交の舞台裏と「疑惑」の新局面
Kiwi’s Pivot Right
「ウイグル弾圧」を支持
ファイブアイズのパートナー諸国は、次期首相となるラクソンが、誰を外相に任命するかに注目している。もしブラウンリーを起用すれば、ニュージーランドはますます中国寄りになる可能性が高い。なにしろブラウンリーは、中国政府の新疆ウイグル自治区における政策を支持するという、欧米諸国ではあり得ない姿勢を示しているのだ。
国民党が前回08~17年に政権を握っていたとき、オーストラリアやイギリスの外交官らは、ニュージーランドのせいでファイブアイズは「5つの目」ではなく「4つの目と1つのウインク」になった(脅威を監視する体制が甘くなった)と皮肉ったものだ。
さらに当時のジョン・キー首相は08年、西側諸国として初めて中国と自由貿易協定を結び、中国との貿易拡大を訴えた。現在は企業役員を務めるキーは、首相時代も今も、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席とも定期的に会合を持つ間柄だ。
そんなキーの事実上の後継者であるラクソンは、前ニュージーランド航空CEOで、世界的な食品・日用品大手ユニリーバの経営幹部も務めていたせいか、対中国の安全保障協力よりも、中国との貿易拡大を重視している。
アーダーンも17年に首相に就任した際は、中国が10年以上にわたる最大の貿易相手国であることを理由に、トランプが牽引する反中姿勢にくみすることに慎重だった。
しかし、ニュージーランドの公安当局が地方政治への中国の干渉に目を光らせ、国の防衛戦略が中国をパートナーではなく脅威と見なすようになると、アーダーンの対中方針はより強硬なものとなった。
アーダーン政権の初代外相であるピーターズは、18年に国の太平洋政策「パシフィック・リセット」を打ち立て、同地域への支援を強化した。この政策は、中国の札束外交に対抗することが目的だったとみられている。
ブラウンリーは10月、国民党政権下では対中貿易に再び焦点が当てられるとの見方を示した。「過去15年間で、中国は実質的にわが国の主要貿易相手国になった。経済的な見地から、われわれはそれを危険にさらす立場にない」