最新記事
フィンランド

ロシア経由の「自転車難民」、動画で運搬手段が明らかに

Refugees Fleeing Russia Brave 14 F Freeze to Cross NATO Border on Cycles

2023年11月28日(火)22時39分
ブレンダン・コール
国境で難民が乗り捨てた自転車

国境で難民が乗り捨てた自転車。運搬手段は?(2023年11月23日) Lehtikuva/Jussi Nukari/REUTERS

<ロシアが西側への新たなハイブリッド攻撃を開始した。隣国フィンランドの国境検問所へ自転車で送り出す、中東やアフリカからの難民だ>

<動画>フィンランドの国境警備隊に追われる自転車難民


ロシアからフィンランドへ国境を越えようとする人々の様子を収めた動画が拡散している。ロシア経由で西側の国に入国しようとする中東やアフリカなどの難民だ。彼らは極北の、氷点下の寒さの中、自転車で唯一開いている国境検問所を目指している。

フィンランドは11月に入り、陸路で入国可能な8つの国境検問所のうち4つを閉鎖した。フィンランドはロシアが、難民を送り込んでいると非難している。4月にNATOに加盟し、アメリカとの軍事協力を強化しているフィンランドへの報復措置だと主張している。11月24日には、最北の「ラヤ・ヨーセッピ」国境検問所除くすべての国境検問所を閉鎖した。

動画を投稿したロシア語アカウント「Raspad i Neuvazhenia(崩壊と軽蔑)」は、「難民たちは摂氏マイナス10度という寒さの中、ロシア経由でやってくる」とコメントしている。視聴回数が27日時点で23万6000回以上となっている。

数十人の難民が自転車に乗り、雪の中で待っている。フィンランド報道機関のラヤは、シリアとアフガニスタンから逃れてきた男性3名が、フィンランド入国を許可されたと伝えた。

ロシア軍が支援

入国を許可された男性の1人であるモアヤド・サラーミは、フィンランド報道機関YLEの取材に、ロシア経由でEU圏内に入るルートは、SNSで広まっていると語った。サラーミによれば、ロシア当局の支援もあったという。

サラーミは、母国からサンクトペテルブルクに到着した後、密航業者から、この移動はロシア軍が取りしきっていると聞かされた。亡命希望者のグループは車で国境地帯まで連れてこられ、自転車を与えられて検問所まで行くように命じられたという。

「ロシア人たちは、『お前たちには難民申請をする権利があるのだから、とりあえず国境検問所に押し寄せてみるといい』と言った」とサラーミは述べた。

フィンランド外務省において戦略的広報を担当するミッコ・キンヌネン大使は23日、本誌の取材に対し、ロシアはNATOの軍事報復を受けない「武器化した」移民を使って戦争を仕掛けている、と非難した。

さらにキンヌネンは、ロシアには「西側社会を分裂させ、問題を発生させることで、ウクライナ支援を再考させようとしている」、と付け加えた。
(翻訳:ガリレオ)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税

ワールド

USTR、一部の国に対する一律関税案策定 20%下

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、米「相互関税」への警戒で安
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中