ハマスの奇襲で「テロの時代」再び...テロ組織のリクルート活動が活発化
Terror on the Rise Globally
タリバンの復権が契機
10月7日の奇襲攻撃で世界を驚かせたおかげで、ハマスは今、数あるテロ組織の頂点に君臨している。国際NGO「過激派対策プロジェクト」の解説によれば、ハマスはイスラム主義とパレスチナ民族主義を折衷した過激思想を信奉し、イスラエルの破壊に執念を燃やす組織だ。
米英、EU、オーストラリア、ニュージーランド、日本はハマスを「テロ組織」に指定しているが、国連はそうしたレッテル貼りを控えている。
ハマスはイランから潤沢な資金と軍事援助を受け、その資金を活用してパレスチナ人の草の根の支持を取り付け、2006年にガザ地区で行われた最初の(そして今のところ最後の)選挙で勝利した。加えてカタールもガザにエネルギー・人道支援として資金を提供しており、おかげでハマスはガザ住民の支持をつなぎ留めているとの見方もある。
一方でテロ増加の背景としてはタリバンの影響も無視できない。21年に米軍がアフガニスタンから撤退し、タリバンが政権に復帰したことで世界中の過激派が大胆になったと、アナリストらは指摘する。
タリバン支配下でアフガニスタンは再び01年の米軍の侵攻以前のような「テロの温床」になった。タリバンの勝利は過激なイスラム主義者の間で誇らしげに語り伝えられていると、イスラム学者のモハマド・モヘクは言う。イスラム主義者は、タリバン復権の延長線上に「イスラエルの破壊」を位置付けているのだ。
モヘクによると、タリバンは教育制度を大幅に見直し、少年たちはマドラサ(イスラム神学校)で急進的なムラー(宗教指導者)から反イスラエルのレトリックを含む過激派のイデオロギーをたたき込まれている。訓練キャンプにはアラブ諸国からアルカイダ関係者が派遣され、新兵にイデオロギー教育をしている。
「タリバンの復権が、新しい世代の過激派戦闘員を訓練し教育する絶好の機会をもたらした」と、アフガニスタン政府の駐エジプト大使や大統領顧問を務めたモヘクは語る。
国連安全保障理事会の分析支援・制裁モニタリングチームは、アフガニスタンでタリバンの庇護下にある過激派グループを数多く特定している。その中には、再び活発化している旧アルカイダ勢力もいる。
アルカイダとハマスの指導者は21年にタリバンの勝利をいち早く祝福し、タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダに忠誠を誓った。ハマスの指導者イスマイル・ハニヤは、タリバンの共同創設者でアフガニスタンの暫定副首相を務めるアブドゥル・ガニ・バラダルに電話をかけ、アメリカの「占領」が終わることは「全ての占領勢力の終焉への序曲であり、その最たるものがイスラエルのパレスチナ占領だ」と伝えた。