最新記事
中東

ハマスの奇襲で「テロの時代」再び...テロ組織のリクルート活動が活発化

Terror on the Rise Globally

2023年10月31日(火)13時40分
リン・オドネル(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

231107P32_TRO_02.jpg

高まる脅威 欧州各国は警戒を強化(10月17日、銃撃事件が起きた翌日のブリュッセル市内) AP/AFLO

タリバンの復権が契機

10月7日の奇襲攻撃で世界を驚かせたおかげで、ハマスは今、数あるテロ組織の頂点に君臨している。国際NGO「過激派対策プロジェクト」の解説によれば、ハマスはイスラム主義とパレスチナ民族主義を折衷した過激思想を信奉し、イスラエルの破壊に執念を燃やす組織だ。

米英、EU、オーストラリア、ニュージーランド、日本はハマスを「テロ組織」に指定しているが、国連はそうしたレッテル貼りを控えている。

ハマスはイランから潤沢な資金と軍事援助を受け、その資金を活用してパレスチナ人の草の根の支持を取り付け、2006年にガザ地区で行われた最初の(そして今のところ最後の)選挙で勝利した。加えてカタールもガザにエネルギー・人道支援として資金を提供しており、おかげでハマスはガザ住民の支持をつなぎ留めているとの見方もある。

一方でテロ増加の背景としてはタリバンの影響も無視できない。21年に米軍がアフガニスタンから撤退し、タリバンが政権に復帰したことで世界中の過激派が大胆になったと、アナリストらは指摘する。

タリバン支配下でアフガニスタンは再び01年の米軍の侵攻以前のような「テロの温床」になった。タリバンの勝利は過激なイスラム主義者の間で誇らしげに語り伝えられていると、イスラム学者のモハマド・モヘクは言う。イスラム主義者は、タリバン復権の延長線上に「イスラエルの破壊」を位置付けているのだ。

モヘクによると、タリバンは教育制度を大幅に見直し、少年たちはマドラサ(イスラム神学校)で急進的なムラー(宗教指導者)から反イスラエルのレトリックを含む過激派のイデオロギーをたたき込まれている。訓練キャンプにはアラブ諸国からアルカイダ関係者が派遣され、新兵にイデオロギー教育をしている。

「タリバンの復権が、新しい世代の過激派戦闘員を訓練し教育する絶好の機会をもたらした」と、アフガニスタン政府の駐エジプト大使や大統領顧問を務めたモヘクは語る。

国連安全保障理事会の分析支援・制裁モニタリングチームは、アフガニスタンでタリバンの庇護下にある過激派グループを数多く特定している。その中には、再び活発化している旧アルカイダ勢力もいる。

アルカイダとハマスの指導者は21年にタリバンの勝利をいち早く祝福し、タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダに忠誠を誓った。ハマスの指導者イスマイル・ハニヤは、タリバンの共同創設者でアフガニスタンの暫定副首相を務めるアブドゥル・ガニ・バラダルに電話をかけ、アメリカの「占領」が終わることは「全ての占領勢力の終焉への序曲であり、その最たるものがイスラエルのパレスチナ占領だ」と伝えた。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中