最新記事
一帯一路

「参加者に華がなさすぎ」...軌道修正を迫られる「一帯一路」はあと10年もつのか?

The Belt and Road Ahead

2023年10月24日(火)13時52分
リリ・パイク

231031p32_ITI_02.jpg

中国からの借金を返せなくなり、99年間リースすることになったスリランカのハンバントタ港 AP/AFLO

グリーン投資の危うさ

このため現在の中国は、新規融資に慎重になっていると専門家は指摘する。「当初の一帯一路は、公的なインフラ整備事業が中心だった」とネドピルワンは言う。だが今は、「多くの意味で、民間(商業)志向になっている」。

この一帯一路の軌道修正は、習の講演における「小さくても美しい」プロジェクトを推進するという発言に表れている。今後は量より質を重視するというわけだ。

習は今回、一帯一路におけるもう1つの軌道修正も明確にした。より環境に優しいプロジェクトを重視する方針だ。

当初の一帯一路プロジェクトはエネルギー、とりわけ石炭火力発電所の建設計画が多く含まれていた。気候変動への影響を指摘する声があっても、中国は石炭を多用する自らの成長モデルを途上国に輸出し続けてきた。

ところが習は、21年の国連総会で石炭火力発電所の新規建設を他国で行わない意向を示し、「途上国における環境に優しい低炭素エネルギーの開発支援を強化する」と宣言した。

実際、今年1~6月期のエネルギー分野における一帯一路プロジェクトは、風力発電施設と太陽光発電関連の建設計画が41%を占めた。

とはいえ、その成功は容易ではない。世界資源研究所のリウ・シュアン中国金融部長は、中国が諸外国や金融機関と連携して、グリーンプロジェクトへの投資リスクを最小限に抑えるとともに、必要な専門的技術の支援もしていく必要があると指摘する。

国内経済の不振が伝えられるなか、途上国への莫大な投資(しかもグリーン投資)を維持していけるのかという問題もある。「経済発展の先頭に立つ国々は、まだ追い付いていないパートナーに手を差し伸べるべきだ」と、習は18日の講演で語った。

このメッセージは、この10年間に中国が友好国を獲得して、世界に影響を与える存在になるのに役立った。その懐の深さが、あと10年続くかどうかは、また別の問題だ。

From Foreign Policy Magazine

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、エヌビディア決算無難通過で

ワールド

米天然ガス生産、24年は微減へ 25年は増加見通し

ワールド

ロシアが北朝鮮に対空ミサイル提供、韓国政府高官が指

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、欧州PMIでユーロ一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中