最新記事
一帯一路

「参加者に華がなさすぎ」...軌道修正を迫られる「一帯一路」はあと10年もつのか?

The Belt and Road Ahead

2023年10月24日(火)13時52分
リリ・パイク

長年にわたり中国の活動に注目してきた独立系ジャーナリストのエリック・オランダーは、主宰するブログ「中国・グローバルサウス・プロジェクト」で、中国の金融機関や企業による融資は、他の国や国際機関のそれよりも効率がいいと指摘する。

「きっちり結果を出すという意味では、中国のほうが確実だ」

一帯一路の一環として建設された道路や橋、港湾、発電所は、途上国に新たな経済機会をもたらしてきた。ボストン大学の研究でも、中国の融資で行われたインフラ整備プロジェクトは、その国の貿易や経済成長に貢献してきたことが分かっている。

一方、中国にとっては、こうしたインフラ融資はたとえ金銭的に莫大な利益にならなくても、大きなメリットをもたらしてきた。それは中国経済にとって何よりも重要な資源を確保することだ。

例えば、国家開発銀行は融資の「返済」として、ベネズエラからは原油を、ガーナからはボーキサイトを得てきた。また、国外のインフラ整備プロジェクトは、鉄鋼や石炭など中国国内では斜陽産業にいる国有企業にビジネスチャンスをもたらしてきた。

さらに一帯一路は、中国という国を世界に売り込む機会でもあった。一帯一路という多様な領域をカバーする看板をつくったことで、中国は国外の開発、融資、事業をまとめて提示し、世界的なプレゼンスを確立してきたのだ。

「もしこれら全てが2国間協力という形で行われていたら、これほどの注目は集めていなかっただろう」と、一帯一路を研究する豪グリフィス・アジア研究所のクリストフ・ネドピルワン所長は語る。

そのイメージと、実際に巨大な建設工事が進んでいる光景は、外交面で中国に恩恵を与えてきた。最近の例では、ホンジュラスが、それまで外交関係のあった台湾から多額の開発援助が得られないと分かると断交して、中国と正式な国交関係を結んだ。

このように一帯一路は中国に多くの恩恵をもたらしてきたが、当初のモデルに問題がなかったわけではない。今回の会合では、この現実を認識して軌道修正を図る中国の努力が浮き彫りになった。

当初、中国の銀行はデューデリジェンス(融資案件の価値やリスクの適正評価)をきちんとせずに巨額の融資を行ったと、レイは指摘する。

そのツケが今、回ってきている。コロナ禍とインフレ、ウクライナ戦争によるサプライチェーンの混乱などにより、多くの途上国が債務返済に窮しており、中国は債務再編交渉に追われているのだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU加盟国、トランプ次期米政権が新関税発動なら協調

ビジネス

経済対策、事業規模39兆円程度 補正予算の一般会計

ワールド

メキシコ大統領、強制送還移民受け入れの用意 トラン

ビジネス

Temuの中国PDD、第3四半期は売上高と利益が予
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中