「参加者に華がなさすぎ」...軌道修正を迫られる「一帯一路」はあと10年もつのか?
The Belt and Road Ahead
長年にわたり中国の活動に注目してきた独立系ジャーナリストのエリック・オランダーは、主宰するブログ「中国・グローバルサウス・プロジェクト」で、中国の金融機関や企業による融資は、他の国や国際機関のそれよりも効率がいいと指摘する。
「きっちり結果を出すという意味では、中国のほうが確実だ」
一帯一路の一環として建設された道路や橋、港湾、発電所は、途上国に新たな経済機会をもたらしてきた。ボストン大学の研究でも、中国の融資で行われたインフラ整備プロジェクトは、その国の貿易や経済成長に貢献してきたことが分かっている。
一方、中国にとっては、こうしたインフラ融資はたとえ金銭的に莫大な利益にならなくても、大きなメリットをもたらしてきた。それは中国経済にとって何よりも重要な資源を確保することだ。
例えば、国家開発銀行は融資の「返済」として、ベネズエラからは原油を、ガーナからはボーキサイトを得てきた。また、国外のインフラ整備プロジェクトは、鉄鋼や石炭など中国国内では斜陽産業にいる国有企業にビジネスチャンスをもたらしてきた。
さらに一帯一路は、中国という国を世界に売り込む機会でもあった。一帯一路という多様な領域をカバーする看板をつくったことで、中国は国外の開発、融資、事業をまとめて提示し、世界的なプレゼンスを確立してきたのだ。
「もしこれら全てが2国間協力という形で行われていたら、これほどの注目は集めていなかっただろう」と、一帯一路を研究する豪グリフィス・アジア研究所のクリストフ・ネドピルワン所長は語る。
そのイメージと、実際に巨大な建設工事が進んでいる光景は、外交面で中国に恩恵を与えてきた。最近の例では、ホンジュラスが、それまで外交関係のあった台湾から多額の開発援助が得られないと分かると断交して、中国と正式な国交関係を結んだ。
このように一帯一路は中国に多くの恩恵をもたらしてきたが、当初のモデルに問題がなかったわけではない。今回の会合では、この現実を認識して軌道修正を図る中国の努力が浮き彫りになった。
当初、中国の銀行はデューデリジェンス(融資案件の価値やリスクの適正評価)をきちんとせずに巨額の融資を行ったと、レイは指摘する。
そのツケが今、回ってきている。コロナ禍とインフレ、ウクライナ戦争によるサプライチェーンの混乱などにより、多くの途上国が債務返済に窮しており、中国は債務再編交渉に追われているのだ。