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中東

ハマスの非道を生んだ「28年前の暗殺」

VIOLENCE BREEDS VIOLENCE

2023年10月16日(月)13時40分
ピーター・シンガー(米プリンストン大学生命倫理学教授)

それでもハマスの残虐なテロ行為の言い訳にはならない。今回の攻撃で、イスラエル側では既に1300人以上が命を奪われた。その大半は女性や子供を含む民間人だ。攻撃はイスラエルによるガザへの報復攻撃を招き、大勢の民間人死傷者が出ることをハマスは承知している。ハマスの軍事施設が住宅地にあるのはイスラエルの攻撃阻止、あるいは少なくとも国際的なイスラエル支持の低下を狙った戦術的判断だ。

イスラエルは報復措置としてガザの完全包囲を宣言し、人口200万人以上(その多くは未成年者)の同地区への電気や燃料、食料、水の供給を遮断している。封鎖がいつまで続くかは分からないが、ハマスが残忍な犯罪行為をしようと、イスラエルに子供たちを飢えさせる権利がないのは明白だ。

中東問題をめぐって多くの第三者は長年、倫理的に優位なのは自治と国家樹立を求めるパレスチナのほうだとみてきた。ところが、今やパレスチナの大義は、大義の名の下で犯された恐ろしい殺人や拉致(その多くは動画に記録された)によって汚された。

逆説的な話だが、倫理的優位を取り戻すには、パレスチナ人はハマスの破滅を願わなければならない。ハマスが「パレスチナ人の代表」を標榜する限り、パレスチナの大義はハマスの悪事に損なわれ続ける。

©Project Syndicate

231024p16NW_PeterSinger_b130.jpgピーター・シンガー
PETER SINGER
プリンストン大学教授(生命倫理学)。著書『動物の解放』(1975年)で注目を集めた。NPO団体TheLife You Can Save(あなたが救える命)創設者。オーストラリア出身。

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