米海軍に戦略見直しを迫る中国の096型巨大ステルス原潜の怖さ
What Is China's Type 096? Next Gen Nuclear Submarine Haunting U.S. Navy
原潜開発競争で世界のトップに? 写真は中国人民解放軍創設70周年の海軍パレードに参加した「長征1号級」(2019.年、青島) REUTERS/Jason Lee
<静かに深く潜行し、射程1万キロ超の核ミサイルを水中発射できる中国の次世代型原潜が太平洋のパワーバランスを揺さぶる>
中国は核ミサイルを水中発射できる次世代型の原子力潜水艦の建造計画を強力に進めており、アメリカをはじめ西側の軍事大国は太平洋における海軍戦略の見直しを迫られると、専門家は警告する。
中国海軍が開発を進めている096型の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)は今も機密のベールに包まれている。だが入手できたわずかの情報を見る限り、これまでの中国の原潜と違って静かに潜行できるため西側のレーダーに探知されにくく、中国軍の水中発射による核攻撃能力を格段に高める性能を持つと、英シンクタンク・戦略地政学評議会の准フェロー、エマ・ソールズベリーは本誌に語った。
「096型の導入で、中国軍が保有する潜水艦が増えるだけではない。ステルス性も高まり、より広い範囲を射程に収める可能性がある。これらのいずれを取っても、米海軍は哨戒能力や配備の練り直しを迫られる」
米海軍大学付属の中国海事研究所は今年8月半ば、第三世代の096型原潜は「アメリカの水中防衛に甚大な影響を与える」との調査結果を発表した。
最新鋭のJL3ミサイルを搭載
米政府の過去の評価によれば、中国海軍は現在、晋級の094型原潜6隻を運用しているが、2030年までに096型2隻を就役させる予定で、最大8隻のSSBNを運用できるようになる。096型の導入により、中国の水中発射の核抑止力は大幅に高まると、ソールズベリーはみる。
094型も096型も「搭載するのは同じ巨浪(JL)3ミサイルだが、096型は094型よりはるかにスクリュー音が静かで、ステルス性が高い」と、ソールズベリーは言う。JL 3は、第三世代の潜水艦発射弾道ミサイルで推定射程は1万キロを超える。報道によれば、中国は既に094型の一部にJL 3の搭載し始めているようだ。
つまり、西側の海軍は、神出鬼没の新型艦を含め、これまでより多くの中国の原潜の動きに目を光らせる必要がある、ということだ。
「より多くのSSBNが、よりステルス性を高めて、偵察活動を始めれば、アメリカはこの海域に割り当てる軍事資産の見直しと配備増強を迫られる」と、ソールズベリーは言う。追尾されにくい新型艦を手に入れた中国海軍は、「彼らが南シナ海における『要塞』と見なす水域」の外側にまで活動範囲を広げかねないが、「JL 3は射程が十分に長いのでその必要はないし、最新鋭の原潜は自国の沿岸域に温存しておきたいだろうから、おそらくそこまでリスクを冒そうとはしないと思われるが......」。