サウジとイランの仲介果たした中国、イスラエル緊迫では動けず 外交的野心の限界さらけ出す
しかし、中国が現在の危機に深く関与する可能性は低い。
一つの理由は、長年の不干渉政策にある。この政策は時に、世界の舞台で大国として振る舞うという中国の目標と衝突することがある。
SOAS中国研究所(ロンドン)のディレクター、スティーブ・ツァン氏は「習近平政権下の中国は、中東を含むあらゆる場所で尊敬され、賞賛されることを望んでいるが、結局のところ、本当に難しい地域安全保障問題を解決するのに必要な行動を起こす気はない」と語る。「中国は手っ取り早い成果だけを欲しがっており、基本的にそこ止まりなのだ」とも指摘した。
中国がイスラエル・パレスチナ問題に取り組んだ前例はある。だが、中国はパレスチナとの関係を含めた長年にわたる中東諸国との関係によって、選択肢が限られている。
一方、一部の中国の学者は最近、パレスチナ人の疎外と、米国主導によるサウジとイスラエルの関係正常化の合意が危機をあおっている根本的な原因だと批判した。
上海国際問題研究院中東研究所のLiu Zhongmin教授は、中国メディアのインタビューに対して「イスラエルとパレスチナの紛争の背後にある最も重要な外的要因は、米国がアブラハム合意(イスラエルとアラブ諸国の国交正常化合意)の履行を試みていることだ」と指摘。「中東地域の和平とパレスチナ問題の公正な解決は不可分だ」と主張した。
取れるリスクに限界
中国がハマスを非難すれば、同国はロシアやイランと対立してしまう可能性もある。
スティムソン・センター(ワシントン)の中国プログラム担当ディレクター、ユン・サン氏は「ハマスの背後にだれがいるのかは不明だが、中国のパートナーである可能性は高い」と指摘。「ロシアはアメリカの注意をそらすという意味で得をするし、イランも候補国に挙がりそうだ。中国にとって、今回の攻撃を非難するということは、『犯人』が特定された場合に行動を起こす義務があることも意味する」と解説した。
一方で、中国は今後数十年間で4000億ドル近い対イラン投資を計画しており、同国に対して影響力を持つ数少ない国の一つだ。だが、イスラエルでは、中国はこれ以上危機に踏み込まないのではないか、との見方がある。
イスラエル国家安全保障研究所の中国研究者、トゥービア・ゲーリング氏は「中国は国際舞台で発言力や影響力を行使し、物事を良い方向に変えようとはしない」と断言した。
中国は中東から石油を輸入し「一帯一路」構想の一環として中東の通信やインフラに投資しているだけに、中東和平は中国の望みだ。しかし、習近平氏のリスクテーク意欲には明確な限界がある。
シンガポール国立大学・中東研究所のシニア研究フェロー、ジーンループ・サマーン氏は、中東の環境が安定していたため、中国がサウジ・イランの関係正常化を仲介することが可能だったと説明。「ところが、紛争の管理となると、状況は大きく異なる。中国がその役割を果たしたがっているとは到底考えられない」と語った。
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