最新記事
中国経済

中国経済の「低迷」は終わりが見えず...それでも、習近平体制は「ビクともしない」と言えるワケ

NOT ABOUT TO GO AWAY

2023年10月11日(水)18時47分
周景顥(ホバート・アンド・ウィリアム・スミス・カレッジ准教授)
中国の第19回共青団大会

国内では独裁体制を固めている(第19回共青団大会、23年6月) XINHUA/AFLO

<西側メディアは中国経済が「長期停滞」に入っていると騒いでいるが、習近平体制の崩壊に直結する可能性は低い>

中国経済は低迷中だ。2023年上半期のGDP伸び率を見ると、中国政府が控えめに設定した年間目標の達成すら危ぶまれる。こうした状況をにらんで、西側メディアは一斉に騒ぎ立てている。いわく、中国経済は「破滅のループ」に突入した。習近平(シー・チンピン)国家主席がどうあがいても、この流れは変えられそうにない......。

この手の予想は目新しいものではない。01年にはアメリカのある学者が10年以内(つまり11年までに)中国の現体制は崩壊すると予測した。この学者はその後予測を1年先に延ばしたが、習体制はビクともしなかった。20年にABCニュースのウェブサイトに掲載された記事によると、中国共産党は一党独裁の政党としてはもはや終末期を迎えているそうだ。旧ソ連・東欧諸国の運命が示すように、共産党支配の国々はおおむね70年と持たない、というのである。

確かに、中国経済はデフレや不動産危機、輸出の不振、若年層の高失業率などに四苦八苦している。政府は借金頼みの成長から質の高い成長に舵を切ろうとしているが、その転換も景気浮揚を妨げているようだ。

そうは言っても、今の状況は毛沢東時代と比べればはるかにましだ。1960~62年には自然災害に失政が重なり、推定3000万人の中国人が餓死した。その後文化大革命中には中国経済は崩壊寸前に追い込まれたが、毛沢東体制は崩れなかった。

アメリカでは有権者の投票行動を左右する最大の要因は経済だ。アメリカの大統領は有権者の支持を失えば政権の座を追われるが、毛沢東の場合はそうではない。共産主義革命を成し遂げたことが国家の指導者としての「正統性」を担保していた。

習の場合は、経済運営の実績に加え、プロパガンダ、強制力、ピラミッド型組織に支えられた専制支配で政権を維持できる。経済が失速すれば国民の評価は下がるにせよ、政権が揺らぐ心配はない。ゼロコロナ政策やゴーストタウンと化した「雄安新区」の開発など、習の肝煎り政策や事業には国民に不人気なものや頓挫したものが山ほどあるが、最高指導者としての習の地位は揺るがない。

2つの支え、つまり経済と政治の両方が同時に崩れない限り、習政権の行方は安泰なのだ。

税制
日本のモデルは「合理的」。安定財源として期待される「たばこ税」はどうあるべきか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

リトアニアで貨物機墜落、搭乗員1人が死亡 空港付近

ワールド

韓国とマレーシア、重要鉱物と防衛で協力強化へ FT

ワールド

韓国サムスンのトップに禁固5年求刑、子会社合併巡る

ビジネス

9月改定景気動向指数、一致指数は前月比+1.3ポイ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中