大谷翔平の活躍は効果大? MLB観客動員数が大幅増加...その本当の理由
だが大谷時代の今は野球に勢いがある。今年のMLB(米大リーグ)の観客動員数(7074万7365人。昨季から600万人以上も増加)は、前年比で1998年以来最も大幅に増加している(7000万人を超えたのは、2017年以来)。新たに導入されたピッチクロック(投球時間制限)や投手交代時の規則など、試合時間を短縮するためのルール改定が効果を上げたのだろう。実際、試合時間は平均で20分ほど短い。
もちろん、今でもアメリカで一番の人気スポーツはアメリカンフットボールで、約1億8840万人のファンがいる。だが野球にも1億7110万人のファンがいる。バスケットボールの1億5590万人よりも、アイスホッケーの1億3620万人よりも多い。大谷やトラウトのような選手がいるのだから、どんどんファンが増えるのは当然だ(この2人が同じチームにいたままリーグ優勝を狙える展開になれば、もっとファンは増えるだろう)。
私の感触では、アメリカの野球ファンは大谷のことが大好きだ。彼らはWBCでアメリカ代表チームが負けたことに失望などしていない。むしろ大谷が大活躍し、日本を優勝に導いたことに感動している。
もはや大谷は「神」になった
あのパフォーマンスと、あの劇的な結末。あれを見れば誰だって身震いする。まさに神業。あの3月21日の晩、彼は世界の、そして私の度肝を抜いた。その後の半年間、彼は全米各地の球場で投打の二刀流パフォーマンスを披露し、野球ファンを熱狂させた。先頃、ある大人の野球ファンに大谷についての感想を聞いたら、彼は即座にこう言った。「ああ、大谷は神様だ」と。
悲しいかな、神様とて不死身ではなかった。記録破りのシーズンも終盤に入った8月23日、大谷の体が悲鳴を上げた。右肘の内側側副靭帯に、またも異変が生じた。それでまた、シーズン前のWBCで無理をした選手は疲労の蓄積などで調子を崩し、あるいは故障しやすいという苦情が噴き出した。
とんでもない。データを見る限り、WBCでの奮闘でレギュラーシーズンに調子を落とし、あるいは負傷欠場に追い込まれた選手はいない。
大谷の場合は? WBCでは7試合に出場し、9イニングしか投げていない。これくらいは春のキャンプでも投げる。
WBCに出場した日本人選手でシーズン中に調子を落としたように見えるのは、わがボストン・レッドソックスの吉田正尚だけだ。WBCでは.409だった打率が徐々に落ちていった。しかし彼はMLBにデビューしたばかりの「新人」。対戦相手の投手が彼の癖に気付き、慣れてくれば、そう簡単に打たせてもらえない。これは新人選手の試練だ。