ハマス、周到に用意された「奇襲攻撃」の意図は? イスラエルとサウジの関係正常化阻止か
攻撃のタイミングを計る
レバノンにおけるハマスの指導者、オサマ・ハムダン氏はロイターに対し、7日の大規模攻撃により、イスラエル側の安全保障上の要求を受け入れることで平和が実現することはないとアラブ諸国は理解すべきだ、と述べた。
その上で「地域の安定や平和を望むなら、出発点はイスラエルによる占領の終結だ。一部(のアラブの国)は残念ながら、アメリカから安全保障を求めるための入り口がイスラエルにあると想定してしまった」と語った。
ネタニヤフ首相は「暗黒の日に対し強力に報復する」と述べた。
7日に行われたハマスによる攻撃は、イスラエルがエジプトとシリアから攻撃を受けた1973年の第四次中東戦争の開始から50年の節目に行われた。
ハマス幹部は7日の攻撃について、「敵が祝祭に気を取られている適切な時期を指導者は決断する必要があった」と指摘。多方面からの攻撃により「敵はショックを受け、イスラエル軍の情報当局がこの作戦について事前に把握できなかったことが証明された」と述べた。
1973年以降、エジプトとイスラエルは平和条約を結び、複数のアラブ諸国もイスラエルとの関係を正常化させた。だがパレスチナ人は国家樹立の夢はむしろ遠のいている。
米シンクタンク大西洋評議会に所属する元米外交官のリチャード・ルバロン氏は、「それが今回の攻撃の一番の動機だった訳ではないだろうが、ハマスの行動は、パレスチナの問題は国交正常化交渉の中のサブトピックの1つとして扱われるべきではないということをサウジに明確に示した」と述べた。
イランの動き
米バイデン政権の高官は、今回の衝突がサウジとイスラエルの国交正常化交渉に及ぼす影響について、「推測するには時期尚早だ」と記者団に述べた。
この高官は、「ハマスのようなテロリスト集団が(正常化交渉に)影響を与えることはないと断言できる。(交渉には)いろいろな道筋がある」と述べた。
ネタニヤフ首相は以前、イスラエルとアラブ諸国の和平合意について、パレスチナに拒否権を持たせるべきではないと述べていた。
サウジとイスラエル、米国の交渉に詳しい地域の消息筋は、パレスチナへの譲歩を拒否するイスラエルは過ちを犯していると話した。
7日の衝突を受け、サウジは双方に「暴力の即時停止」を求めた。
一方のイランは、パレスチナ人による自衛の行動だと表明。最高指導者ハメネイ師の顧問は、イラン政府は「パレスチナとエルサレムが開放されるまで」パレスチナの武装勢力と共にあり続けると述べた。
ハマスに近いパレスチナ当局者は、「(今回)イスラエルに向けて放たれた全てのロケットをイランは把握している。イランが指示したというわけではないが、ハマスなどが兵器を近代化できたのがイランのお陰だということは周知の事実だ」と述べた。
イランは中東一帯で数々の武装勢力を支援しており、ガザのほかレバノンやリア、イラク、イエメンで存在感を高めている。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派は先週、サウジとの国境沿いにバーレーン軍兵士を攻撃して4人を殺害。これについて、アナリストはイランがサウジに警告したものだと指摘していた。
ワシントン近東政策研究所に所属する元米外交官のデニス・ロス氏は7日の攻撃について、「米国とサウジ、イスラエルの間で画期的な合意が成立するのを阻止する狙いがあった」と断言した。