最新記事
軍事

たしかに見えない...ウクライナ、兵士を敵の目から隠す「透明マント」開発 特殊作戦に効果発揮か

Ukraine Army's 'Invisibility Cloak' Ready for Mass Production: Developers

2023年10月7日(土)14時10分
デービッド・ブレナン
ウクライナが開発した「透明マント」

@FedorovMykhailo/X

<ウクライナ政府が主導する研究プログラムが、赤外線センサーから対象者を「隠す」マントを開発。その性能の高さを示す動画を公開した>

高性能なカメラを搭載した多くのドローンが飛び交うウクライナの戦場では、夜間であっても兵士たちは常に敵から攻撃を受ける脅威にさらされている。そうした状況を変える可能性をもった「透明マント」の量産準備が整ったと、ウクライナの開発チームが本誌に語った。その魔法のようなマントの効果は、テストの様子を撮影した動画を見れば一目瞭然だ。

■【動画】たしかに見えない...ウクライナで開発された、兵士を敵の目から隠す「透明マント」

この「透明マント」は、ロシアの赤外線センサーからウクライナの兵士を隠すことを目的に開発されたもの。すでに月間150枚の生産が可能な状態だという。

ウクライナ政府が主催する研究プログラム、ブレイブ1の下でマントを開発しているチームのマキシム・ボリアックは10月4日、戦場で使われている暗視装置に対応するため、すでにマントは改良段階に入っていると説明した。

「マントをテストした軍からは、肯定的なフィードバックとともに、助言や要望があった」とボリアックは振り返り、「私たちの科学研究が近い将来、改良版マントの成功によって報われることを願っている」と述べた。

10月に入り、ブレイブ1がマントのテストの動画を公開すると、ウクライナの新技術担当副首相兼デジタルトランスフォーメーション(DX)担当相ミハイロ・フェドロフは、「おとぎ話の透明マント」に例えてその性能を称賛した。

実際の完成度は動画で示されている以上に高い

ボリアックによれば、この技術の実際の完成度は動画で示されている以上に高いという。「動画では人間の顔部分を認識することができるが、これは専用マスクで覆われていないためだ。マントのキットにはフェイスマスクが含まれている」とボリアックは説明する。「フェイスマスクと専用のサングラスを着ければ、赤外線カメラからは完全に見えなくなる」

「現在、生産能力は月間150枚が限界だが、必要であれば増産も可能だ」とボリアックは述べる。ウクライナ軍がこの技術を採用するか、採用する場合はいつになるかは不明だ。

「動画で紹介したサンプルは量産可能だ。周囲に自然植生があれば、立っているとき、座っているとき、横たわっているときと、どのような姿勢でも幅広く使用できる。開けた場所では、横たわっているときのみマントを使用できる」

ボリアックによればこの技術は、隠密行動が必要な部隊をはじめ、さまざまな専門部隊を念頭に置いて設計されているという。特殊作戦、偵察、破壊工作、工兵、狙撃、さらには、塹壕(ざんごう)の監視所で見張りを行う兵士、軍事施設をパトロールする兵士などだ。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中