中央アジアでうごめく「ロシア後」の地政学
Players Are Reconsidering Their Bets
米・アルメニア軍事演習
アルメニアはロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)の創設メンバーだが、何もしてくれないロシアに不満を募らせ、今年1月にCSTOの合同軍事演習を自国で開催しないことを表明。代わりに9月、アメリカとの合同軍事演習を実施した。
こうした動きは、必ずしもアルメニアの全面的なロシア離れを示唆するものではない。両国の経済と安全保障、そして政治は複雑に絡み合っており、そう簡単に解きほぐせるものではない。
とはいえ、この地域におけるロシアの影響力が低下していることは間違いない。現在のロシアは、軍事力の大部分をウクライナに集中させているだけでなく、ナゴルノカラバフ問題で現状維持に徹しているように見えるなど、外交面も十分機能していない。
代わりに南カフカスで存在感を増しているのはアゼルバイジャンと親しいトルコや、アルメニアに好意的なイランなどの地域大国。アルメニアのロシアに対する落胆を機に、アメリカもこの地域の安全保障に(限定的だが)関わるチャンスを得た。
アメリカは中央アジアでも、プレゼンス拡大に乗り出している。ジョー・バイデン米大統領は9月19日、国連総会のために訪米中のカザフスタンとウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタンの中央アジア5カ国(C5)の首脳と会合を開いた。「C5プラス1」の会合は15年に始まったが、アメリカから大統領が出席したのは今回が初めてだ。
中央アジアでは今、経済的な競争が激しくなっている。その中心にいるのは中国だ。
エネルギーや鉱物資源が豊富で、地理的にも中国と近い中央アジアは、中国の広域経済圏構想「一帯一路」の要の1つに位置付けられており、中国はこの地域の石油やガスパイプラインや鉄道、道路などのインフラ整備に莫大な投資をしている。
中国は、政治や安全保障面でも中央アジア諸国との関係を強化している。タジキスタンに中国の軍事施設を建設したのがいい例だ。ただし中央アジアは基本的にロシアの影響圏であることへの配慮は忘れておらず、安全保障面はロシア、経済面は中国という一種のすみ分けを確立してきた。