ロシアの裏庭でアゼルバイジャンが「対テロ戦争」を開始、孤立したアルメニア人住民に民族浄化の危機
Where's Nagorno-Karabakh? Azerbaijan Eyes Russia Ally in 'Special Operation'
アゼルバイジャン国防省はナゴルノカラバフでアルメニア軍部隊を標的にした写真と言うが、アルメニア国防省はここに軍隊はいないと否定 REPUBLIC OF AZERBAIJAN MINISTRY OF DEFENsE
<ロシアの制止も聞かなくなった旧ソ連国アゼルバイジャンが、同じく隣国のアルメニアに3度目の領土紛争を仕掛けた。そのアルメニアは米軍と軍事演習をする軍事同盟国だ>
アゼルバイジャンは9月19日、アルメニアとの間の係争地、アゼルバイジャン西部ナゴルノカラバフ地域への攻撃を開始した。もともと不安定な旧ソ連地域の外交関係はますます緊張を増し、ロシア、EU、アメリカの介入を求める声が高まっている。
アゼルバイジャン国防省は19日、アルメニア人勢力が実行支配するナゴルノカラバフ地域で「対テロ対策」を開始したと発表した。攻撃前の数週間、アゼルバイジャンは前線付近の軍備増強を続けていた。
この地域をめぐるアゼルバイジャンとアルメニアの緊張の高まりは、今に始まったことではない。アルメニア人が「アルツァフ共和国」と呼ぶナゴルノカラバフ共和国はアルメニア系住民が大多数を占めているが、国際的にはアゼルバイジャンの一部として承認されている。ソ連崩壊後、両国は2度に渡ってこの地域の領有を争う戦闘に突入した。
2020年には大規模な衝突が起き、兵士7000人以上が死亡した。アゼルバイジャンはソ連時代のナゴルノカラバフの約3分の1と隣接する7つの領土の大部分の支配を取り戻した。
ロシアにも青天の霹靂
ここ数カ月、紛争の再燃が懸念されていた。アゼルバイジャンが昨年12月にアルメニアとナゴルノカラバフをつなぐ唯一のルートであるラチン回廊を封鎖し、人道的危機が起きる恐れが高まったからだ。目下の最大の争点は、ナゴルノカラバフのアルメニア系住民の安全確保だ。
ナゴルノカラバフの人権オンブズマンであるアルタク・ベグラリアンは、X(旧ツイッター)に「長い間、血に飢えていたアゼルバイジャンは、アルツァルフの人々を虐殺する血なまぐさい段階」を開始した、と投稿した。
「ロシア、アメリカ、EUよ、これが権利と安全の保証なのか?」と、ベグラリアンは付け加えた。
国際危機グループ(ICG)の南コーカサス地域担当上級アナリスト、オレシャ・バルタニャンは、国連総会でアゼルバイジャンとアルメニアの外相に対し、アメリカ、EU、ロシアその他の世界の指導者たちが国際的な調停者として、「戦闘を止め、話し合いで目的を達成することが最善の道だとし、アゼルバイジャンを納得させるために最大限の努力をすることが重要だ」と述べた。
ロシアは2020年の紛争では停戦を仲介する役割を果たしたが、アゼルバイジャンの今回の攻撃は数分前に知らされただけだったと、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は語った。そして紛争当事者に既存の和平合意を尊重するよう促しただけだった。