最新記事
内閣改造

第2次岸田再改造内閣の経済対策、衆院解散・総選挙にらみ肥大化のおそれ 需給ギャップに下方圧力

2023年9月13日(水)16時05分
ロイター
岸田文雄首相

岸田文雄首相(写真)が内閣改造・党役員人事に踏み切ったことで、今後は取りまとめを急ぐ経済対策の中身が焦点となる。10日、ニューデリーで撮影(2023年 ロイター/Anushree Fadnavis)

岸田文雄首相が内閣改造・党役員人事に踏み切ったことで、今後は取りまとめを急ぐ経済対策の中身が焦点となる。財政支出を正当化してきた需要不足は2023年4―6月期に解消したが、その後成長率そのものが下方改定され、再び下押し圧力にさらされかねない。衆院解散・総選挙をにらみ追加歳出を求める声が強まることも予想され、水ぶくれの対策となる懸念は拭えない。

首相が近く対策指示

複数の政府関係者によると、岸田首相は近く関係閣僚に経済対策の検討を指示する。内閣改造に先立つ10日、訪問先のインドで首相は「必要な予算にしっかりと裏打ちされた思い切った内容の経済対策を実行したい」としていた。

最重要課題と位置づける物価高対応では、石油元売り会社への補助拡充や電気・ガス価格激変緩和対策を延長することで家計負担を和らげたい考え。

家計負担にも影響する為替は一時147円80銭と、昨年11月以来約10カ月ぶりの円安水準に振れた。ここにきて代表的なニューヨークWTI原油先物価格も10カ月ぶりの高値に上昇。ロシアがサウジアラビアと足並みをそろえる形で年末までの自主減産を決めたことで、先高観も根強い。

年末まで延長した補助拡充を巡り、与党内には「来春の力強い賃上げを確認できる年度末(3月末)までの延長を視野に入れるべきだ」(中堅幹部)との声がある。

供給サイドを刺激

物価高対策に加えて賃上げ継続を後押しするメニューも並びそうだ。要求官庁からは「地方でも賃上げが可能となる中堅・中小企業の投資促進策を強化する必要がある」との声が聞かれる。

連合によると、23年春闘では基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた平均賃上げ率は3.58%と、1993年以来30年ぶりの高水準となった。中小企業の平均賃上げ率も3.23%に達しており、対策を通じて賃上げ継続を支援する構えだ。

関係者2人によると、脱炭素化に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)や、半導体など経済安全保障分野での対策も追加される可能性があるという。

「需要を膨らませればかえって物価高を助長する。供給サイドの対策にシフトし、規模より中身を追求していく必要がある」と、別の政府関係者は語る。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中