14歳スイス人が体験した韓国の世界スカウト・ジャンボリー「混乱もあったけど楽しさも」
会場では8月1日から3日間で、熱中症になった人が500人を超えたと報じられた。日本では熱中症のことばかりが報じられたようだが、総勢約4万3千人の参加者のうちで500人の患者は全体の1%に過ぎない。スイス代表団の8月3日の公式発表によると、異常な暑さの中でもスイス勢は全員が元気だった。大会側の緊急対策で、氷や塩入りの水が配給され、冷房がきいたバスや日陰のエリアも設置され、追加で中・小型の扇風機も届いて、猛暑対策は刻々とよくなったそうだ。就寝に関しては、ロビン君の場合は暑さとマットレスの硬さとで寝付きはよくなかったが、寝入ってしまえばぐっすりと十分に睡眠できた。
虫に刺される人も多かったとの報道については、ロビン君は、確かに、何カ所も虫に刺された跡がある人を見かけたという。ただし、スイス代表団では、テントにネットを2重に張って虫よけをしっかりしていたことが功を奏し、ロビン君はまったく問題なかった。虫刺されは体質も関係しているだろう。またロビン君いわく「テント設置の場所も関係している気がします。海に近い方だと虫が多かったと思います。僕のグループは、海から離れていたエリアでした」とのことだった。
食事は少なめだったが3食あり、トイレも改善された
食事は、自国のテントで調理して食べた。レストランを出している国もあり、有料で食べることができた。食事についても問題は発生した。たとえば、初日の夜、スイス代表団は注文していた食材を17時に受け取る予定だったが、届いたのは3時間後の20時。だが、配達の遅れはすぐに改善された。全体的に食事の量は少なめだったという。食事に関して、ロビン君は大きな不満はなかった。
トイレの不潔さも報道で指摘されていた。衛生面が改善される前にロビン君が撮ったトイレ内部の写真を見せてもらった。床が砂だらけの状態だったが、劣悪な状態には見えなかった。筆者の友人の近所に住む女子もスイス代表団にいて、その母親によると、ピカピカのトイレではないけれど使うのも嫌だというほどひどくなかったと娘(その女子)は言っていたそうだ。
野外のトイレなのだから、多少の我慢は必要と言ったら、言い過ぎだろうか。また、安全や健康が最優先とはいえ、スカウトの目的はパラダイスのような環境でキャンプをすることではないのだから、報道で強調するのはどうなのかと感じた。
他国のメンバーと積極的に交流
会場では他国のメンバーと話したり、ネッカチーフやワッペンなどを交換することが奨励されていた。ロビン君もヨーロッパ諸国、アフリカ諸国(ロビン君はフランス語も話すので、モロッコなどのメンバーとフランス語で会話した)、オーストラリア、アメリカのメンバーと連日会って話した。アジア地域は、開催国の韓国、香港、ベトナムに加え、日本のメンバーにも会った。
大会終了後に連絡しようと思うほどには仲良くならなかったが、よい経験だったという。スイス代表団内で知り合ったメンバーとは、大会後も親交を深めるつもりだという。ロビン君は、ジャンボリーのプログラムに含まれていた、寺や美術館、空中アスレチック公園などの訪問も楽しんだ。
「今回のジャンボリーは問題点もあったけれど、スイスでのキャンプとは全く違う経験ができて、とても楽しかったです。これからも、スイスやほかの国でスカウトに参加します」(ロビン君)
今回のジャンボリーは韓国内では政治的な問題にも発展しているが、参加した子どもたちの多くが、10代の素晴らしい思い出の1ページを綴れたと願いたい。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com