核戦争勃発の危険? 朝鮮半島「中露より高リスク」の現実に取り組む第一歩【注目ニュースをアニメで解説】
Newsweek Japan-YouTube
<北朝鮮問題解決への第一歩となる「意外と取り組みやすい」方法を解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>
朝鮮戦争の「休戦」成立から、この夏で70年が経過。もしも南北の境界線で新たな火が燃え上がれば、今度こそ壊滅的な核戦争になりかねない。核戦争が勃発する危険性すら無視できない「半島情勢の現実」に取り組む方法とは──。
本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「実は中露より高リスク? 朝鮮半島「下手すれば核戦争」の現実【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。
今のアメリカは、ウクライナにおけるロシアの脅威と台湾に対する中国の脅威に気を取られている。だからこそ、朝鮮半島で平和協定不在の状態が続けば、いつ悪夢のシナリオが現実になってもおかしくないと複数のアメリカ政府元高官は言う。
退役空軍中将で、かつてインド太平洋軍の副司令官を務めたダン・リーフは、今は立法府が北朝鮮との平和条約締結を優先的に進めるべきだと考えている。それが核戦争の悲劇を回避することにつながり、ひいては人権問題などで北朝鮮から一定の譲歩を引き出せるかもしれないからだ。
朝鮮戦争のきっかけとなった東西冷戦はとっくに終わったが、南北朝鮮の緊張は今なお続いている。特に今、中国とロシア、北朝鮮の3国は過去数十年になかったほど接近している。
2018年6月には、当時の米大統領ドナルド・トランプと北朝鮮の金正恩総書記が「朝鮮半島の完全な非核化を目指す」などを掲げたシンガポール声明に署名したが、その後の会談で進展が見られず、結局以前の緊張状態に戻った。
国防総省で次官補のアジア・太平洋安全保障担当特別補佐官や北朝鮮担当上級顧問を務め、今はアメリカ平和研究所(USIP)にいるフランク・アウムも、朝鮮半島の安定に向けて議会が動くべきだと考える。そのためにはアメリカ政府が今までとは違う対応を示し、和平への本気度を見せる必要があると言う。
今再び朝鮮半島で戦争リスクが高まっている背景には「外交努力も関係改善の意欲もなく、かつアメリカも韓国も北朝鮮も核抑止力ばかりを過大に重視してきた事実」があると、アウムは考える。
バイデン政権は北朝鮮と「前提条件なし」で対話する用意があると強調するが、韓国政府の姿勢は以前と同じではない。前任の文在寅は南北対話を重視していたが、現大統領の尹錫悦は核の抑止力を重視し、北朝鮮における人権状況への批判を強めている。
一方の北朝鮮も、金正恩の妹で朝鮮労働党の副部長を務めている金与正が、7月17日の談話の中でアメリカの提案を「ばかげている」と一蹴した。アメリカでも韓国でも「前任の大統領が署名・確約した合意は全て、次の政権によって覆されてきた」と述べた。
公式の外交関係は凍結されたままだが、アメリカ連邦議会の下院では今年、北朝鮮に関して真逆の法案が2つ提出されている。
朝鮮戦争の正式な終結を求める「朝鮮半島和平法案」(HR1369)と、人権問題の状況をめぐり北朝鮮政府に対する懲罰的な措置の強化を要求する「北朝鮮人権再認定法案」(HR3012)。
前者を提出したのは民主党のブラッド・シャーマン下院議員、後者は共和党のヤング・キム下院議員で、どちらもロサンゼルス選出の議員だ。
キムは当然HR1369に反対しているが、シャーマンはそのスタンスに懐疑的だ。「自分の敵と話をしなければ何も始まらない。いま一番に話すべき相手は彼らだ」とし、相手の立場を理解する必要があると述べた。
もちろん「アメリカが平和協定の交渉を望むと宣言しても、それが協定の締結につながる保証はない。平和協定が非核化への大きな一歩になる保証もない」が、費用対効果を考えればベストな選択だとシャーマンは考える。不安定な「休戦」状態を正式な「終戦」へ転換するのは「正しい方向への一歩」だと確信しているという。
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