最新記事

ドイツ

さらに過激化するドイツ極右政党...ナチスに似てきたAfDは、なぜ支持率2位にまで躍進できたか

WHY IS GERMANY’S FAR RIGHT SURGING?

2023年8月30日(水)17時24分
ヘルムート・アンハイアー(独ヘルティ行政大学院教授)

自らの主張はほとんど発信しないAfDの方針

「より大胆に前へ」を旗印にするショルツ政権は21年12月の発足以来、多くの改革を掲げてきた。しかしコロナ禍とウクライナ戦争によって、政権は問題に立ち向かっては危機的状況に陥り、ドイツの連邦レベルの政治ではこれまでほとんど見られない未熟さを露呈している。

他党がそんな状況とはいえ、AfDは反対と批判に終始し、自らの主張めいたものはほとんど発信していない。現状に不満を抱き、主流政党に不信感を持つ有権者の受け皿といった立ち位置が続いている。だが政権と他の野党の失策で支持率が上昇するにつれ、AfDの指導層は以前にも増して権力を欲するようになった。

有権者の間には、まだAfDへの警戒心が残っている。しかし同党が連立政権の一翼を担うだけでなく、その指導的地位に立つ可能性さえ無視できなくなってきた。

AfDが20%を超える得票率を長く維持している東部では、そうした状況が今後2年のうちに起こるかもしれない。ドイツの主流政党が結集して態勢を整えなければ、フランスやイタリア、スウェーデンのように、極右が政権を狙う位置につけるのは時間の問題だ。

©Project Syndicate

230905P15NW_Helmut_130SQ.jpgヘルムート・アンハイアー
HELMUT K. ANHEIER
独ヘルティ行政大学院教授(社会学)、米UCLAラスキン公共政策大学院非常勤教授(社会福祉)。共著に『台頭する非営利セクター』(邦訳・ダイヤモンド社)がある。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の発言要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中