最新記事
ドイツ

さらに過激化するドイツ極右政党...ナチスに似てきたAfDは、なぜ支持率2位にまで躍進できたか

WHY IS GERMANY’S FAR RIGHT SURGING?

2023年8月30日(水)17時24分
ヘルムート・アンハイアー(独ヘルティ行政大学院教授)
ドイツのための選択肢(AfD)党大会

7月のAfD党大会では反EUの強硬な主張も飛び出した JENS SCHLUETER/GETTY IMAGES

<現状への不満や主流政党への不信感を持つ有権者の受け皿という立ち位置で、支持率2番手に躍り出た「ドイツのための選択肢(AfD)」>

ドイツ最大の極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、国内にちらばる国家主義勢力をここ2年ほどで結集させた。内紛が絶えず、指導者が頻繁に代わるというイメージがあったが、今のAfDはビョルン・ヘッケという人物が統率している。政界の主流派からはいまだに異端視されているものの、AfDは政権を担う準備はできているというアピールに躍起だ。

ヘッケは東部のチューリンゲン州支部を率い、党内で最も過激な派閥「フリューゲル(翼)」の中心的存在として台頭した。この派閥はネオナチ的な言動を政府情報機関からマークされた末に解散したが、ヘッケはさらに先鋭化したAfDの事実上の指導者となった。

AfDの右傾化ぶりは、7月に北東部のマクデブルクで開かれた党大会を見れば明らかだ。このときヘッケはEUに対する党の姿勢を改めて打ち出し、「真のヨーロッパが生きるために、今のEUは死すべきだ」と宣言した。

この言葉は、1930年代のナチスを思わせる。当時のナチスも、古い体制を破壊することによって、よりよい新しい体制がもたらされると主張していた。AfDの他の政治家も、ヘッケの主張を支持しているようだ。

右傾化戦略は支持率アップに効果的

右傾化戦略が支持率アップに効果的であることを、AfDはわきまえている。2013年の創設以降しばらくの間、同党の支持率は9~14%だった。だがヨーロッパが難民危機に瀕していた15年頃に強硬な反移民の立場を明確にしたことで、支持率は一時20%近くに上昇した。

その後、1年もたたないうちに支持率は10%ほどに下落。しかし昨年2月からのウクライナ戦争で、安全保障だけではなくエネルギー供給に対する国民の不安が高まったことが、AfDに有利に働いたようだ。

ロシアのウクライナ侵攻前に11%だった支持率は、今年5月末には18%に上昇。8月になると22%に達し、キリスト教民主同盟(CDU)に次ぐ2番手に躍り出た。

目下の焦点は、AfDが支持者をつなぎ留められるかどうかだ。今のところは、他党の弱みに付け込むというおなじみの戦略を取っている。ショルツ首相率いる社会民主党(SPD)と、自由民主党(FDP)、緑の党がそれぞれのイメージカラー(順に赤、黄、緑)をとって結成した「信号機連立政権」と、第1党のCDUが多くの弱みを露呈している今、この戦略は効果的だ。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

フジHD、中居氏巡る第三者委が報告書 「業務の延長

ワールド

25年度予算が成立、歳出総額115兆円 衆院で再議

ビジネス

日銀、10―25年の国債買い入れ初減額 「買入比率

ビジネス

ハチソンの港湾売却計画、親中紙が再考促す全面記事 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中