最新記事
ネオナチ

ロシアのネオナチ戦闘部隊「ルシッチ」がプーチンに戦線離脱を通告、ワグネルに続く反乱になるか

Russian Neo-Nazi Paramilitary Group Issues Putin an Ultimatum: ISW

2023年8月28日(月)17時17分
アンドリュー・スタントン

ロシア民族統一の日にナチス式敬礼をする愛国主義者(2013年11月4日、モスクワ) REUTERS/Maxim Shemetov

<プリゴジンは死んでも、プーチンに挑戦することでその権威を揺るがす不満の種は死んでいない。ワグネルと手打ちをした上ネオナチにまで妥協すればプーチンの権威は地に落ちる>

頭蓋骨を片手にウクライナ人絶滅を誓う狂信的愛国主義者

ウクライナ戦争でロシア軍と共に戦ってきた極右のネオナチ戦闘部隊「ルシッチ」のリーダーであるヤン・イゴレビッチ・ペトロフスキーが先日、フィンランド警察に逮捕された。ルシッチはリーダーの解放を求めて、ウラジーミル・プーチン大統領に最後通牒を突き付けた、と戦争研究所(ISW)は8月26日のリポートで伝えた。

フィンランド当局がペトロフスキーを拘束したのは「ウクライナの要請によるもの」であり、ウクライナはテロ容疑に関連してペトロフスキーの身柄引き渡しを求めている、とフィンランドのテレビ局MTV3は8月25日に報じた。

ペトロフスキーは個人としてEUとアメリカから制裁を受けている戦争犯罪容疑者だ。米財務省は、ペトロフスキーをルシッチの「軍事訓練指導者」と認定し、2022年9月に制裁を科した。それは同年2月にプーチンが開始したロシアのウクライナ侵攻が、明らかに正当性を欠き、人権侵害が疑われるとして世界的な非難が巻き起こっていたときだ。

フィンランドは今年4月にアメリカ、カナダ、ヨーロッパの軍事同盟であるNATOに加盟したばかり。ロシアが欧州の近隣諸国により大きな影響力を行使しようとする懸念が高まるなかで、ペトロフスキーを拘束したことは、フィンランドと他の欧州諸国との結びつきを強化する効果があった。

リーダーの解放を要求

ロイター通信によれば「露骨なネオナチ部隊」として設立されたルシッチは、2014年にウクライナのドンバス地方でロシアが支援するルガンスク人民共和国軍の一部として戦闘に参加、その後もウクライナ侵攻の一翼を担ってきた。

だがアメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)によれば、ルシッチはペトロフスキーが解放されなければ、ウクライナ戦争から撤退するとロシア政府を脅しているという。

「ロシアの極右非正規準軍事組織である『ルシッチ破壊工作偵察グループ』は8月25日、ロシア政府が現在フィンランドに拘束されているルシッチの司令官ヤン・ペトロフスキーが釈放されるまで、ウクライナでの戦闘任務を拒否すると発表した」とISWは報告している。

ISWによれば、ルシッチはロシア政府を非難し、「ロシア政府が在外ロシア人を保護する義務を果たさないなら、われわれにもロシアを守る義務はない」と言ったという。

ルシッチは、ロシアの民間軍事会社ワグネルともつながりがあるとみられている。ワグネルは、創設者のエフゲニー・プリゴジンが飛行機「事故」で死亡したことで混乱している。今年6月、ワグネルはウクライナ侵攻の停滞を理由にロシア軍指導部に対して反乱を起こし、プーチンとプリゴジンの関係は悪化した。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

情報BOX:ローマ教皇死去、各国首脳の反応

ワールド

プーチン氏側近「米ロの信頼回復必要」、北極圏協力再

ワールド

トランプ氏、国防長官に「全幅の信頼」と報道官 親族

ビジネス

米CB景気先行指数、3月は0.7%低下 関税巡る不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 2
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 3
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ページを隠す「金箔の装飾」の意外な意味とは?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 9
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 10
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中