心臓が飛び出たまま成長した少年ミカエル、手術経て初めて胸の中で鼓動始めた
回診を受けるミカエル。これまで屋外で運動ができなかったため腕や足が極端に細い姿が痛ましい(写真提供・セブランス病院)
<大人のこぶし大の心臓が胸の上にぶら下がったまま鼓動して......>
生まれつき胸骨がないなどの理由で、心臓が体外に飛び出した状態で生まれる「心転移症(Ectopia cordis)」。新生児の12万5000人に1人の割合で発症し、そのうち9割が死産あるいは生後3日以内に死亡するという希少疾患だ。
インドネシアの少年ミカエルもそんな厳しい運命を背負った数少ない子供の一人だった。現地の医師からは2年しか生きられないと告げられたものの、両親の介護のおかげもあって奇跡的に7歳まで成長した。しかし彼の胸には大人の拳ほどの心臓がぶら下がっており、鼓動する様子がそのまま見える状態だ。母親は「心臓発作が起こるのではないかといつも心配していました。この子は普段から息がとても苦しい様子で......」と語り、もはや猶予の時間がないのは誰の目にも明らかだった。
この状況を現地の教会を通じて伝え聞いた韓国セブランス病院の医療スタッフは、招聘治療プログラムの対象としてミカエルを呼び寄せ、無事に彼の心臓を体内に収める手術に成功した。KBSなど韓国メディアが報じた。
海外の患者を招待して治療を行う
セブランス病院は、韓国ソウルの新村(シンチョン)にある延世大学医科大学の付属病院。朝鮮王朝では初の西欧型医療人材養成機関として1885年に設立された廣惠院を前身とする医療機関で、セブランスという名称は財政難だった1899年に米国の事業家ルイ・ヘンリー・セブランスから莫大な寄付を受けたことに由来するという。また、初期には運営に米国から来た宣教師たちが携わっていたこともあり、1935年までは病院長は米国から来た宣教師らが務めていた。
こうした設立当初からの経緯もあり、セブランス病院では2011年から経済的な問題や医療水準の問題で満足な治療を受けられない海外の患者を韓国に招待して治療を行う「グローバルセブランス、グローバルチャリティー」というプログラムを実施。これまで病院内外から計88億ウォン(約9億5000万円)相当の義援金を受けて、ハイチ、ケニアなど29カ国226人の患者を招待治療してきた。
今回、「心転移症」に苦しんでいるインドネシアの少年ミカエルへの手術や入院治療もこのプログラムを通じて行われ、外部の支援団体であるグローバル愛の分かち合い、韓国心臓財団、韓国基督公報などの後援もあったという。