心臓が飛び出たまま成長した少年ミカエル、手術経て初めて胸の中で鼓動始めた
「心転移症」の手術を受けたミカエルと母親、手術を担当した医療スタッフ(写真提供・セブランス病院)
予想以上に心臓が飛び出して深刻な状態......
しかし、実際に韓国にやってきたミカエルを検査すると、さまざまな問題が出てきた。
一番の問題は体の外に出ている心臓が大きいことだった。シン·ユリム心臓血管外科教授は「予想していたよりも心臓が飛び出してお腹の方に大きく垂れ下がっている状態でした。これが深刻でした」と語った。
また、心臓カテーテル検査や脳のMRIなどを行ったところ、2つあるはずの心室がひとつしかない機能性単心室であることが判明。さらに肺に血流を送る肺動脈がなく、4つあるはずの心臓弁膜もひとつしかないので血液が逆流していた。全身と肺を循環した血液がひとつの心室へと流入し、心臓に負担がかかっている状態だった。また、両方の血液が心臓内で混ざって慢性低酸素症まで発生し、心臓はもちろん、脳やほかの臓器の機能低下まで憂慮される状況だった。
人工横隔膜で心臓のスペースを確保
手術を執刀したハン・ソクジュ、シン・ユリム両教授はまず心臓を体内に入れるためのスペースを確保する方法を探った。これまで体内になかった心臓を無理に入れようとすると肺や心臓が押しやられて負担がかかるからだ。
そのため、お腹の他中の臓器を横に押し出し、人工材料で横隔膜を使って空間を作り、心臓を挿入した。さらに、単心室内で血液が混ざらないようにするため心房中隔の手術、弁膜逆流を防ぐ弁膜成形手術も同時進行で行ったという。
全ての手術を終えてからは手術部位を人工材料だけで覆って経過を見守った。すぐに縫合してしまえば、腫れていた心臓が体内に入れたことで圧力が加わり無理がかかるかもしれないからだ。幸いにも、ミカエルは2日後には心臓の腫れもひけて縫合まで完了することができた。
これまで家の外に出ることもできなかったミカエルだったが、今は普通の子供と一緒に外で遊ぶことも可能になった。今回、ミカエルの手術が成功したことは、希少疾患患者に希望の光をもたらすものとして話題になっている。