もう限界!?ロシアのミサイルを迎撃しきれなくなってきたウクライナ
Why Russian Missiles Are Becoming Harder To Intercept
ロシアのミサイル攻撃で破壊された幼稚園(8月15日、西部リヴィヴ) Roman Baluk-REUTERS
<ロシアミサイルの波状攻撃を受け、ウクライナの防空システムは限界に近づいている>
8月14日の深夜から15日未明にかけて、ウクライナ各地でロシア軍の新たな攻撃が行われ被害が発生した。ウクライナ政府は15日、ロシア軍が戦術を切り替え、ミサイルの波状攻撃を仕掛けていると述べた。
ウクライナのメディアによれば、ロシア軍は諜報活動によるデータを利用してミサイルの飛行経路をプログラミングすることで、「可能な限り効率的に弱点につけこみ、わが国の防空体制をすりぬけている」、とウクライナ空軍司令部のユーリー・イグナト報道官は語っている。
「ミサイルは絶えずルートを変えている」と、イグナトは説明した。ミサイルのなかには編隊を組んで飛ぶ機動飛行能力が向上し、方向転換を繰り返すタイプもあり、防空システムでミサイルを撃ち落とすのが難しくなっているという。
ウクライナは、連日続くミサイルやドローンによる攻撃から空と都市を守るため、一貫して防空システムの強化を求めてきた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8月の初めに「毎日、毎週、ウクライナの空を守るために、より多くの防空システムとミサイルを確保できるよう取り組んでいる」と述べた。そして、ウクライナには「現状よりもはるかに強力な防空システムが必要だ」と付け加えた。
空中と海上から攻撃
15日の朝、ウクライナ軍は、ロシアが空中および海上から発射する兵器を使用して、一晩で少なくとも28発の巡航ミサイルをウクライナに撃ち込んだと発表した。
ウクライナ空軍の声明によれば、ロシア軍は航空機からKh-22ミサイル4発、Kh-101とKh-555ミサイル20発を発射し、黒海を拠点とするロシアのフリゲート艦からカリブル巡航ミサイル4発を発射した。ウクライナ側はそのうち合計で16発の巡航ミサイルを撃墜したという。
ウクライナ大統領府のオレクシー・クレバ副長官はテレグラムへの投稿で、ロシアは「ウクライナの地域、都市、村落に対し、新たに大規模なミサイル攻撃を仕掛けた」と述べた。
クレバによれば、ウクライナ西部の都市リビウとその近郊の2つの村、そして中部の都市ドニプロのスポーツ施設が標的となった。東部の都市クラマトルシクでは食品倉庫が、紛争中の南部ザポリージャ地方では住宅と幼稚園が被害を受けた。
15日の朝、ロシア国防省は声明で、ウクライナ政府の「軍需産業の主要企業に対して空と海の長距離高精度兵器による集中攻撃を行った」と発表した。「攻撃は目標に到達した。割り当てられた対象すべてに命中した」とロシア政府は述べた。
その前日、ウクライナ軍は、数回にわたるロシア軍の攻撃のなかでイラン製シャヘド自爆攻撃ドローン15機とカリブル巡航ミサイル8発を撃墜したことを発表した。
アメリカは14日に発表した新たな対ウクライナ援助パッケージの中で、ウクライナで運用されているパトリオットシステム用の防空弾薬を追加で送ると述べている。
またドイツ政府は先週、アメリカ製地対空ミサイルシステム「パトリオット」2セットを新たに供与したと発表した。