最新記事
ウクライナ

もう限界!?ロシアのミサイルを迎撃しきれなくなってきたウクライナ

Why Russian Missiles Are Becoming Harder To Intercept

2023年8月16日(水)21時50分
エリー・クック

ロシアのミサイル攻撃で破壊された幼稚園(8月15日、西部リヴィヴ) Roman Baluk-REUTERS

<ロシアミサイルの波状攻撃を受け、ウクライナの防空システムは限界に近づいている>

8月14日の深夜から15日未明にかけて、ウクライナ各地でロシア軍の新たな攻撃が行われ被害が発生した。ウクライナ政府は15日、ロシア軍が戦術を切り替え、ミサイルの波状攻撃を仕掛けていると述べた。

ウクライナのメディアによれば、ロシア軍は諜報活動によるデータを利用してミサイルの飛行経路をプログラミングすることで、「可能な限り効率的に弱点につけこみ、わが国の防空体制をすりぬけている」、とウクライナ空軍司令部のユーリー・イグナト報道官は語っている。

「ミサイルは絶えずルートを変えている」と、イグナトは説明した。ミサイルのなかには編隊を組んで飛ぶ機動飛行能力が向上し、方向転換を繰り返すタイプもあり、防空システムでミサイルを撃ち落とすのが難しくなっているという。

ウクライナは、連日続くミサイルやドローンによる攻撃から空と都市を守るため、一貫して防空システムの強化を求めてきた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8月の初めに「毎日、毎週、ウクライナの空を守るために、より多くの防空システムとミサイルを確保できるよう取り組んでいる」と述べた。そして、ウクライナには「現状よりもはるかに強力な防空システムが必要だ」と付け加えた。

空中と海上から攻撃

15日の朝、ウクライナ軍は、ロシアが空中および海上から発射する兵器を使用して、一晩で少なくとも28発の巡航ミサイルをウクライナに撃ち込んだと発表した。

ウクライナ空軍の声明によれば、ロシア軍は航空機からKh-22ミサイル4発、Kh-101とKh-555ミサイル20発を発射し、黒海を拠点とするロシアのフリゲート艦からカリブル巡航ミサイル4発を発射した。ウクライナ側はそのうち合計で16発の巡航ミサイルを撃墜したという。

ウクライナ大統領府のオレクシー・クレバ副長官はテレグラムへの投稿で、ロシアは「ウクライナの地域、都市、村落に対し、新たに大規模なミサイル攻撃を仕掛けた」と述べた。

クレバによれば、ウクライナ西部の都市リビウとその近郊の2つの村、そして中部の都市ドニプロのスポーツ施設が標的となった。東部の都市クラマトルシクでは食品倉庫が、紛争中の南部ザポリージャ地方では住宅と幼稚園が被害を受けた。

15日の朝、ロシア国防省は声明で、ウクライナ政府の「軍需産業の主要企業に対して空と海の長距離高精度兵器による集中攻撃を行った」と発表した。「攻撃は目標に到達した。割り当てられた対象すべてに命中した」とロシア政府は述べた。

その前日、ウクライナ軍は、数回にわたるロシア軍の攻撃のなかでイラン製シャヘド自爆攻撃ドローン15機とカリブル巡航ミサイル8発を撃墜したことを発表した。

アメリカは14日に発表した新たな対ウクライナ援助パッケージの中で、ウクライナで運用されているパトリオットシステム用の防空弾薬を追加で送ると述べている。

またドイツ政府は先週、アメリカ製地対空ミサイルシステム「パトリオット」2セットを新たに供与したと発表した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中