最新記事
ウクライナ情勢

ロシア黒海艦隊、ウクライナ無人艇の攻撃で相次ぐ被害──「大規模反攻への地ならし」と戦争研究所

Russia's Black Sea Fleet Suffers More Problems as Video Shows Tanker Strike

2023年8月7日(月)16時06分
ブレンダン・コール
大型揚陸艦オレネゴルスキー・ゴルニャク

潜水艇が捉えたロシアの大型揚陸艦オレネゴルスキー・ゴルニャク(8月4日、ノボロシスク近海で) Reuters

<大型艦船が大破するのは、昨年春に撃沈された巡洋艦モスクワ以来>

黒海でロシア軍のタンカーが無人艇に攻撃されるようすを捉えた動画がSNSに投稿され、話題になっている。この前日にもロシア軍の大型艦艇が無人艇の攻撃を受けている。

黒海でロシア軍の標的に対する攻撃が相次いでいるのは、ウクライナ軍がこの地域でより大規模な反転攻勢の地ならしをするためだと、米シンクタンクの戦争研究所は指摘する。「ウクライナ軍は、ロシアのより深くを攻撃し、海の標的も取り込んでいる」

ロシアは7月、ウクライナ産穀物の黒海経由での輸出に関する協定から離脱。それ以来、黒海周辺では双方の攻撃が激化している。

SNSに投稿された動画は、アゾフ海と黒海をつなぐケルチ海峡で、無人艇がロシアの石油・ケミカルタンカーを攻撃した際に撮影されたもの。この攻撃により、同海峡にかかるクリミア半島とロシアを結ぶ橋の通行は3時間にわたり遮断された。

ロシア当局は、タンカー「SIG」(乗員11人)が4日午後11時20分頃に攻撃を受けたと明らかにした。ウクライナの英字紙キーウ・ポストが報じたところでは、このタンカーはロシア軍部隊に燃料を補給する任務に就いており、ロシア軍が保有するタンカーの中でも性能はトップクラスだという。

動画は無人艇に搭載されたカメラで撮影されたもので、無人艇が水面ぎりぎりをタンカーに向けて急速に近づいていく様子が捉えられている。そして映像は衝突とともに消える。

この攻撃でタンカーは機関室近くの喫水線あたりに穴が開いた。ロシア当局はメッセージアプリのテレグラムで「無人艇攻撃の結果とみられるが、船は沈んではいない」と述べている。ロシアメディアの報道によれば攻撃によるけが人はおらず、石油の流出もないという。

前日には大型揚陸艇が攻撃で大破

英BBCはウクライナの公安当局者の話として、攻撃には無人艇が使われたと伝えている。一方でウクライナ保安局(SBU)のワシリ・マリュク長官は、ウクライナ側が攻撃を行ったかどうか明言は避けたが、そうした攻撃は「非常に論理的で」なおかつ「完全に合法的」だと述べた。

親ウクライナ派のX(元ツイッター)アカウント「ウォー・トランスレイティッド」はこの動画を「黒海におけるロシア軍タンカーに対する攻撃のすばらしい記録映像。当初は違法な橋に対する攻撃だと勘違いされた」というテキストとともに投稿した。

「確かにこの事案は他の(ロシア)軍艦艇にちょうど24時間前に起きた事案によって影が薄くなっているが、双方の事案の影響は大きい。ロシア艦艇が沈められるのはこれが最後だと信じる理由はどこにもない」

24時間前の事案というのは、ロシア海軍の大型揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」が、ロシア南部ノボロシスク付近で攻撃されたことを指している。ノボロシスクには大きなロシア軍の海軍基地があるほか、石油積み出し港としても知られる。

オレネゴルスキー・ゴルニャクは全長約110メートル、3600トンで、水陸両用部隊を運んでいる。ロシアの北方艦隊で運用されることが多いが、ウクライナ侵攻が始まってからは黒海艦隊で使われていた。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中