ロシアの火砲5000門を破壊、砲撃戦を有利に展開しながら勝てないウクライナ
How Russia Lost '5,000 Artillery Systems' in Ukraine
M109自走榴弾砲の発射準備をするウクライナ兵(8月7日、東部ドネツク州) Viacheslav Ratynskyi-REUTERS
<ユニークなドローン活用で命中率は劇的に向上したが>
ロシア軍のウクライナ侵攻開始から1年半近く。ウクライナの反転攻勢で両軍とも深刻な砲弾不足に陥っているが、ロシア軍はこれまでに5000門を超える火砲を失ったと、ウクライナ側はみている。
ロシア軍は昨年2月末の開戦以降、5013門の砲撃兵器を失ったと、ウクライナ軍参謀本部は8月9日に発表した。うち17門は過去24時間の間に失ったとも付け加えた。
本誌はこの数字をロシア国防省に確認中だ。
一方、ロシア側の最新の発表によれば、ウクライナ軍は野砲と迫撃砲を合わせて5803門、多連装ロケットシステムを搭載した戦闘車両を1144台失ったとされている。
砲撃は、侵攻開始当初から両軍にとって極めて重要な攻撃手段となった。難航するウクライナの反転攻勢の最中でも、その事情に変わりはない。
「この戦争では砲撃が極めて大きな位置を占める」と、ハーグ戦略研究所(HCSS)のデービッド・エリソン戦略アナリストは本誌に語った。「敵の後方への砲撃はウクライナ軍の最も重要な戦術であり、それは反転攻勢でも変わらない」
弾切れが怖くて撃ちまくれない
「過去の経験でも地上戦で鍵を握ったのは砲撃だ。今後もそうだろう」と、同じくHCSSのポール・バンフーフト戦略アナリストは言う。
火砲と弾薬はウクライナが求める軍事支援のリストで常に上位を占めてきた。米国防総省は最近、ウクライナに追加の軍事支援を行なったが、その中には早くに供与した高軌道ロケット砲システム(HIMARS/ハイマース)などで使用される砲弾も含まれる。
今回の支援では、多数の子爆弾を広範囲にばらまくクラスター弾も提供された。これに対しては激しい批判が起きたが、バイデン政権は弾薬の供給が間に合わないという理由で供与を断行した。
ウクライナ軍は「弾切れになるのを恐れて砲撃を控えざるを得ず、それが(反転攻勢の)ネックになったと後になって指摘されかねない」と、バンフーフトは言う。ただ、弾薬不足はNATOがウクライナへの支援を渋っているからではない、とも付け加えた。
いくら供給しても、すぐに備蓄が底を突く状況なのだ。「これほど大量の弾薬が消費される戦いは、ヨーロッパでは第2次世界大戦以降、これが初めてだ」と、エリソンは言う。