ロシアの火砲5000門を破壊、砲撃戦を有利に展開しながら勝てないウクライナ
How Russia Lost '5,000 Artillery Systems' in Ukraine
大量の弾薬が飛び交っているのは確かでも、両軍の火砲そのものが何門破壊されたのかを把握するのは容易ではない。
英王立統合軍事研究所(RUSI)のニック・レイノルズ陸戦専門研究員によると、ロシアの砲撃兵器がどの程度破壊されたかは不明だが、ロシア軍の砲撃が減ったことは確かだという。背景には、兵器の破壊に加え、弾薬不足もあるとみられる。
5000門余りが破壊されたというウクライナ軍参謀本部の発表は「かなり正確だろう」と、元英陸軍大佐で、イギリスとNATOの化学・生物・放射性物質・核(CBRN)防衛チームを率いたハミッシュ・ディ・ブレトンゴードンは本誌に語った。ウクライナ軍はロシア軍の火砲を次々に破壊しており、兵器の補充はとうてい間に合わないというのだ。
ディ・ブレトンゴードンら一部専門家は、ウクライナ軍の砲撃は戦術的にロシアのそれに勝るとみている。その鍵を握るのが、この戦争で一躍注目を浴びたドローン(無人機)だ。
ウクライナ軍はドローンを偵察に活用することで砲撃の精度を上げている、と彼らは言う。砲弾が落ちた場所にドローンを飛ばせば、ロシア軍の被害状況を確認できる。標的を外れていたら、砲手はドローンのカメラでそれを目視して調整を行い、再び砲撃を行う。
この方法で砲撃の精度は飛躍的に高まった。「ゲームチェンジャー」とも言うべきその効果には、西側の軍事専門家も注目していると、ディ・ブレトンゴードンは言う。
「このアイデアにはNATO軍も脱帽するだろう。『必要は発明の母』とはまさにこのことだ」
防衛戦突破に必要な条件
ディ・ブレトンゴードンによれば、ドローン、そしてスマートフォンとアプリを組み込むことで、ウクライナ軍の砲撃は威力を増したが、ロシア軍はこの方法を取り入れていない。急きょ召集され、十分な訓練も受けずに戦場に送り込まれたロシアの徴用兵たちは、ドローンの操作などできないからだ。
ウクライナ軍の反転攻勢が始まった段階では、激しい砲撃でロシア軍の防衛戦を突破できるとの期待があった。
だがウクライナ軍は、塹壕や広大な地雷原、「竜の歯」などの障害物と、ロシア軍が何重にも張り巡らした堅牢な防御陣地は容易に崩れず、膠着状態が続いている。
何カ月も前から入念に構築されていたロシアの防衛陣地がウクライナ東部と南部の現在の前線の多くで、ウクライナの砲兵隊を苦戦させていると、エリソンは指摘する。
「理想を言えば、地上部隊への空からの援護か、装甲車両による敵陣突破と砲撃を組み合わせること」で、ロシアの防御陣地を切り崩せると、エリソンは言うが、現実にはそれは望めない状況だ。

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