「ワグネル」もう1つの戦場...中東の「覇権争い」に、ロシアとエジプトまで絡んだスーダン紛争の奇々怪々
Really a Proxy War
ハルツーム郊外で支持者に迎えられるRSFのダガロ(写真中央) UMIT BEKTASーREUTERS
<沈静化の兆しが見えない国軍とRSFの戦闘、実態はそれぞれの背後にいるサウジとUAEが、中東の盟主の座を争う代理戦争だ>
スーダンで国軍と準軍事組織の戦闘が始まって既に3カ月余り。支配権を争う2人の司令官が停戦を受け入れてもすぐにまた衝突が激化し、沈静化の兆しは見えない。
国軍トップのアブデル・ファタハ・ブルハンは2019年のクーデターで、長期にわたり独裁支配を敷いていたオマル・バシル大統領を追放し実権を掌握。21年に再度クーデターを起こし、民主派を排除して軍主導の統治を固めた。そのブルハンに盾突いたのが準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」を率いるモハメド・ハムダン・ダガロだ。
ダガロはバシル前大統領時代にRSF(当時の名称はジャンジャウィード)を率いて、ブルハン率いる国軍と共に西部ダルフール地方で起きた紛争を鎮圧した。21年のクーデター後に樹立された暫定政権「主権評議会」ではブルハンが議長、ダガロが副議長に就任。2人は協力して政権運営を行うはずだったが、RSFを国軍に統合する計画をめぐってたもとを分かち、配下の部隊が衝突する事態となった。
4月15日に始まった戦闘は多大な人的被害をもたらしている。7月半ば時点で死者は3000人、国内外の避難民は300万人を超えたという。
2人の司令官の対立はただの内輪もめにとどまらない。スーダンは中東とアフリカを結ぶ要衝に位置し、豊かな天然資源に恵まれている。
この国で起きた紛争は、ペルシャ湾岸地域の2大国、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)にとっては影響力拡大の絶好のチャンスとなる。あわよくば中東の盟主として自国の地位を打ち固めようと、サウジアラビアはブルハンに肩入れし、UAEはダガロの後ろ盾となった。
RSFが国軍を打ち負かす見込みは薄いが、国軍が完全にRSFを抑え込むのも至難の業だ。考えられるシナリオは軍閥が群雄割拠する今のリビアのように、スーダンもブルハン派とダガロ派の支配地域に分割されるというもの。
そうなれば、ブルハン派とサウジアラビアはRSFつぶしに懸命になり、UAEはRSFへのてこ入れを強化して、湾岸地域の新たなリーダーにのし上がろうとするだろう。
対米関係でも張り合う
サウジアラビアとUAEは共に湾岸協力会議(GCC)の加盟国で、これまで何十年も表向きは同盟関係にあった。それでも、この2国が地域の盟主の座を狙って互いに対抗意識を燃やしていることは以前から薄々分かっていた。
ただ、それがはっきり表に出たのは最近のこと。中東では長年緊張が続いてきたため、両国は競争よりも協力を優先せざるを得なかったからだ。
今では事情が違う。